ギレルモ・デル・トロ『シェイプ・オブ・ウォーター』を観た

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』大ヒット上映中!


映画の日に。2018年の3月1日は『シェイプ・オブ・ウォーター』の他にも『ブラックパンサー』『15時17分パリ行き』が同時に封切られるなkなかすごい日で、どれ観ようかなと思いつつこれに。

映画は心地よい夢のようでまったく文句なしだった。前日夜から当日朝にかけて春の嵐っぽい土砂降り開けだったんだけど、観終わってみたらこの映画の封切りにぴったりだったというか、あの雨の中彼と彼女がどこかに旅立ったのかな…なんて空想をひろげてしまった。

いいシーンたくさんあったというか全部いいシーンみたいな映画だけど、イライザの友人の売れない絵描き(ジャイルズ)が、イライザに手伝わされる逃亡計画のなか、「彼」を初めて目にしてその美しさと存在への共感に心を奪われるところが、なんてことないシーンだけどすごく心に残った。


パク・チャヌク『お嬢さん』を観た

お嬢さん|絶賛公開中!


劇場公開時に観に行き損ねていた(早稲田松竹で『哭声/コクソン』といっしょにかかってた時に見ようと思ったんだけど満員で入れなかった)のをWOWOWで録画して観た。(エロシーンふくめ)わりと冷静に観てしまった。これは劇場で観たら印象ちがっただろうな。

パク・チャヌクの映画観たことなかったけど(と思ってたらJSAは観たかもしれない)、ひじょうに精密だがどことなく奇妙な映像がずっと続く感じは他の作品もそうなのだろうか。


第10回 恵比寿映像祭「インヴィジブル」を見てきた

第10回 恵比寿映像祭(2018)


見てきた。恵比寿映像祭開催のタイミングがいいのかわりと毎年見れてる。今年はマルチスクリーンや迫力ある音響でスペクタクル! という感じの作品がすくなくて、密やかな感じの作品が目立った印象。

これまで何度かの展示を見逃し続けてた青柳菜摘『羽化日記』がようやく見られてよかった。見上げる位置に展示された昆虫観察の機材が整頓されたアクリルケースが、まるで自分が飼育ケースのなかの昆虫から、見上げた学習机の引き出しの中身を透視している視線のように思えて、『黒い土の時間』にも通じる感覚があった。

あとラファエル・ローゼンタールのレンチキュラー・ペインティングシリーズの展示があって、作品もよかったんだけど、ラファエルの作品の起点にあるインターネット感が「うつろいゆく無情の世界」と表現されていて、これはいわゆるポストインターネット的な世界観についての表現としていままで見たなかで一番納得感があったし、たしかにその感覚をラファエルは作品化しているように思った。


ナンシー・マイヤーズ『マイ・インターン』を観た

映画『マイ・インターン』オフィシャルサイト


ずいぶん前に録画してあったのを観た。熟年インターンの話なのはなんとなく知ってたけど、企業は主婦が立ち上げて急成長中のECベンチャーという設定なのね。ウェルメイドなラブコメ風味のお仕事もの映画として面白かったけど、「若さを手放して枯れた存在感を手に入れたいが、他方あらゆる分野においての『現役感』は保ちたい」という男性一般の矛盾した願望が全面的に展開されていて恥ずかしい感じもあるなと思った。監督男性かと思ったら女性だった。


グレッグ・コーズ『AlphaGo』を観た

AlphaGo


AlphaGoのドキュメンタリー、観たいなと思ってたらNetflixにあったので観た。感動的なドキュメンタリーだった。イ・セドルの「1勝で十分」という言葉が響くな。

第四の革命読んで以来、シンタクティックエンジンとしての人工知能と、セマンティックエンジンとしての人間の関係のあり方が気になっていて、AlphaGoについても人間と人工知能の対決というよりも、囲碁という表現において人工知能がすることに人間が意味を見いだそうとしている、という感じなのかなと思う。


大林宣彦『この空の花 長岡花火物語』を観た


早稲田松竹の新春上映で『この世界の片隅に』と二本立てでかかっていたので、未見だった『この空の花』を観に行った。評判は聞いてたけどたしか度肝を抜かれた。戦争、震災の熾烈さ、人間賛歌、そして人間による表現そのものへの賛歌。そのすべてをあまさず観客に手渡すために映画に許されるゲインを遙かに超えるセンチメンタリズムを入力された結果バグってる映画という感じだった。観客もバッファオーバーフローでハッキングされるんだと思う。

テンションが高まった結果、ここで帰るわけには行くまいと『この世界の片隅に』も続けて観ることになった。


大久明子『勝手にふるえてろ』を観た

映画『勝手にふるえてろ』公式サイト


今年の一本目からいい映画観れてよかった。ふつうなら間違いなく類型的なキャラクター造形になりそうな設定(10代の淡い初恋を引きずって妄想に逃げ込んでいる20代の地味な独身OL)を、とてつもない解像度の演技(とくに自意識の空回りを雄弁に伝える発声!)で痛々しくも愛らしい、まるで生身の人物のように演じてみせた松浦茉優はどれだけ賞賛しても足りない。妄想と現実が区別なく描かれる演出も完璧。

そういえば綿矢りさの原作をかなり前にiOSの単体電子書籍アプリで(モリサワのMCBOOK採用のアプリだったので研究用に)買ったけど未読だった。もう起動しない可能性が極めて高いけど動いたら読もう…


ベスト今年観た映画2017

まあいいかと思ってたんだけど、クロカワさんに聞かれたのでまとめておく。

とかかな。


過去の


今年観た映画そのほか


ジョン・キャメロン・ミッチェル『パーティで女の子に話しかけるには』を観た

映画『パーティで女の子に話しかけるには』公式サイト


空いた時間で予備知識なしに飛び込んだ映画だったので、想像してなかったものをみせてもらえてうれしい驚きだった。これはいわゆる、今しか撮れないエル・ファニングを結晶化した純粋な意味でのアイドル映画。この手の映画としてのポイントを押さえつつ(女優に変な格好や突飛な振る舞いをさせるとか、派手な化粧で歌を歌わせるとか)イタさがあんまなくほどほどにオシャレなので老体に深刻なダメージがこなくてよかった。


ケネス・ロナーガン『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を観た

映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』公式サイト


飯田橋ギンレイホール(初めて行った)で『LION/ライオン 25年目のただいま』との二本立てだったけどこっちだけ観てきた。

マンチェスターって聞いてイギリスのマンチェスターのことだと思い込んで観てたんだけど、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」はアメリカの町のほうだった。主人公の人生に起きたことをひじょうにゆったりとした演出で重すぎず軽すぎず描く映画で関心したんだけど、ギンレイホールのお客はなかなかファンキーで上映中最前席で好きに立ち上がったり、トイレなのか何度も席を外すので気がそがれる場面があった。しかもその席を外した場面が、まさに映画の中で主人公がうかつに家を留守にした結果彼の人生に深く影を落とすことになる決定的な出来事が起きるところだったという…