朱戸アオ『リウーを待ちながら』を読んだ

リウーを待ちながら/朱戸アオ 第1話 横走へようこそ - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ


これもBug-magazineの『汽水域の旅』で取り上げられてて読んだやつ(マンバ通信で前さんが紹介してた)。日本国内での致死伝染病(ペスト)のアウトブレイクをきわめてリアルに(漫画的な愛嬌も込みで)描ききった素晴らしい漫画だった。上中下の3巻で完結するところもポイント高い(人に薦めやすい)。

著者の朱戸アオさんのblogにある覚書で、医療関係者であったわけでも医学を専門的に勉強したわけでもない、一介の漫画家だと書かれていてそこもまったく予想外でびっくりした。


よしながふみ『大奥』を読んだ

大奥


ゲンロン8のサイン会中継で激賞されてたので読んでみた。完結してるんだと思ってたらしてないのね。

どういう話かはなんとなく知っていたとはいえ江戸幕府のこともよく知らないしBL系の作品も読みつけないので最初かなり混乱したけど、だんだんと慣れて内容に没頭できるようになったらおもしろみが理解できるようになった。読んでみてわかったこととして、この作品の設定(ジェンダーロールが逆転した時代劇)やBL的な(といっていいのかよくわからないけど)恋愛描写の必然性に、漫画の記号性が関わっているんだなと思えた部分があって、服装や髪型での差別化が困難ななかで極めて微細な記号の差異で描き分けられるこの漫画のキャラクターの世界において、社会のなかで男女の立場が逆転するに至るSF的な考証とは別のレベルで性別は容易に反転しうるしもっというとあるキャラクターと別のキャラクターも容易に混同しうる、そういう不確定性もふくめたかたちの「恋愛」が描かれているんじゃないか。歴史が好きな人にはもうちょっと別の文脈があるんだと思うけどそんなことを思った。


ヤマシタトモコ『違国日記』を読んだ

s-book.net Library Service


作家もしくは連載のパーマリンクページつくってほしいなあ…(ヤマシタトモコさんのtwitterアカウントにはAmazon著者センターがリンクされてたけど)。

Bug-magazineの永田希さんの本紹介連載「汽水域の旅」で「ヒットしちゃうんじゃないかと思うので、流行って読みづらくなる前に読んだ方がいいんじゃないですか?とあったので素直に読んだ。たしかにこれは素晴らしい〜。

朝(主人公の女子中学生)のキャラクターの描写にどうしても往年の富士宏さんぽさを感じてしまう。


阿部共実『月曜日の友達』を読んだ

月曜日の友達 1 | 阿部共実 | 【試し読みあり】 – 小学館コミック


阿部共実さんの作品は話題になった『ちーちゃんはちょっと足りない』は読んであんまり自分には合わないかなーと思っていたんだけど、今作はものすごく突き刺さった。2巻まで読み終えて慈しむように再読しているけど、すべてのページが素晴らしい。ジュブナイル文学としてものすごい高みにあるように思う。

『月曜日の友達』深く深く深く感動したので年甲斐もなく壁紙にした

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ところでこれ好きなひとはBCCKSでも販売されてる鯉実ちと紗さんの『単語帳と狐のしっぽ』も好きだと思うのでぜひ読んでほしいな。


単語帳と狐のしっぽ』 鯉実ちと紗著


佐藤雅彦/菅俊一/高橋秀明『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』を読んだ

『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』 — 佐藤 雅彦 作 菅 俊一 作 高橋 秀明 画 — マガジンハウスの本


行動経済学の知見のおもしろさを伝えるのに「トンチの利いた痛快まんが」というフォーマットを使うという「ザ・取り合わせの妙」という本。こないだTRANSBOOKSの打ち上げ飲み会の席で菅さんとエクリの、っていうかここでは学習まんが アフォーダンスの大林さんがいて話をする機会があり、『ヘンテコノミクス』とか『学習まんが アフォーダンス』みたいに、安易な企画や単なるパロディではなく、難しいことがらを漫画というメディアの特性をフル活用して伝えるという、新しい「学習まんが」というものが他にも生まれうるんじゃないかという話がちょっとできてうれしかったんだけど、その意味でも『ヘンテコノミクス』はいい本でこういう本がもっとあったらしいなーと思う。

ただちょっと、これは作画の高橋秀明さんが漫画家ではないからという事情が大きいせいもあるだろうけど、『ヘンテコノミクス』のまんがはちょっとまんが自体としての魅力には欠けている部分があって(いい感じの話もあって、代表制ヒューリスティックを説明する『「         」の巻』とかは人を食った内容とトーンがマッチしてた気がする)、別のまんが家が描いてたらどうなってたのかなーと感じなくもなかった。

でいうと、まんがとはあまり接点のない分野の世界をまんがを使って身近なものとして伝えるというコンセプトも、たまたまだろうけど判型も似ている高野文子『ドミトリーともきんす』と比べて考えてみるとおもしろいかもと思った。


『大島智子 個展 パルコでもロイホでもラブホでもいいよ』を見た

大島智子 個展 パルコでもロイホでもラブホでもいいよ


見てきた。大島さんやその作品はtwitterなりtumblrなり、あるいはtofubeats『No.1』MVでの被写体なりである時期以降のインターネットにふわふわと漂っているものだったなという思いはありせど僕自身はそれほど好んだり追いかけたりしていなかったつもりだったので、個展があると聞いて行くでしょという気持ちになったところが自分でいちばん新鮮に思えた。

男性にとっての生理の話題みたいなもので彼女の作品を軽々しくいいとかわかるとか言うのは危険だという感覚があるけど、今回の展示は完成作品と彩色前の原画が並べてあったことと、フォントで組まれた(きわめて繊細で理知的に見える)テキストと(こういってはなんだが、とてもつたなく見える)彼女直筆の文字が重ねられた画集冒頭のページにつながりがあるように思えたのが発見だった。

それはそれとして『No.1』のMVはいまだに強度あるなー


仲川麻子『飼育少女』を読んだ

#飼育少女 - ベビモフ|子育てはカラフル!マンガ+よみもの


講談社の女性誌『FRaU』編集部がつくってる育児世代むけのWebマンガマガジン(なんだと僕は思っているけど違うのかもしれない)で連載されている女子高生が生物の先生と水生生物を飼育するマンガ。このサイトがちょっと前まで『Baby!』って名前だったのが『ベビモフ』にリニューアルした記念で11月末まで全部読める。

流麗な絵で古くさい脱力ギャグが特徴というマンガだけど、なんか好き(アフタヌーンぽいのかな)。仲川麻子さんの他の作品はどうなのかなと思って前作『ハケンの麻生さん』も読んだけど、これはハートウォーミングすぎて(これはモーニング連載だからなのかな)ちょっと物足りなかった。

ハケンの麻生さん / 仲川麻子 - モーニング公式サイト - モアイ


今井大輔『セツナフリック』

今井大輔 | セツナフリック | Champion タップ!


新しめのSF漫画を探そうとこないだコミックナタリーの検索結果をしらみつぶしに見てたんだけど、それで見つけた7月にChampionタップで新連載になってた漫画。1話(自分の運が数値化されて自分の好きなタイミングでその運ポイントを使うことができる世界の話)も面白かったんだけど、ちょうど今日配信されてた2話(遺伝子レベルでの相性のいい相手が見つかる婚活サイトを使う女性の話)もおもしろかった。