ヘンリー・ペトロフスキー『フォークの歯はなぜ四本になったか』を読んだ

フォークの歯はなぜ四本になったか 実用品の進化論 (平凡社ライブラリー)
ヘンリー・ペトロスキー
平凡社
売り上げランキング: 81,280

デザインの文化論としてたびたび紹介されるこの本をいままで手にとったことがなかったのに気づいて読んでみた。読んでみてわかったのは『フォークの歯はなぜ四本になったか』というキャッチーなタイトルはいわゆる「タイトルで問いかけ」とか「具体的な数字」とかよく聞く書籍タイトルの方程式としての名付けであって(わりと古い本のような気がしていたのでそういう文脈で見てなかった。単行本は95年発行)、本の内容は原著タイトルの「The Evolution of Useful Things」のほうがふさわしい内容だった。しかもフォークの歯がなぜ四本になったかは本書の記述でもかなりあいまい。

「デザイン」という言葉がひじょうに誤解を招きやすいことはすでに多くのひとに共有されている認識だと思うけど、それはつまり「デザイン」という言葉が「ゼロから何かを完成させた」という空気を出しすぎているためなのだが、実際のところすべての人工物は自然物を加工して用途に間に合わせたものであるという意味においてゼロからでも完成でもなく、むしろ「いまだ不十分である」という認識とそれに対する思案から次のかたちの人工物が生まれるという絶えざる変化の断面を発明ないしデザインと呼んでいるにすぎない。ということが、フォークに代表される日常的な実用品、あまりに日常的すぎて「なぜその形でなければならないのか」が問われにくい人工物の形の来歴を残存する資料から紐解いていく。

なんというか、いわばフォークやクリップやファスナーのコミットログを読むようなコラムで正直冗長な感じもあるけど。


町田洋『夜とコンクリート』を読んだ

夜とコンクリート
夜とコンクリート
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祥伝社 (2014-03-10)

「暇なんで」

「若さと暇さが合わさる唯一の時、大学の夏休みなんで」

『夏休みの街』

この本そのものが大学の夏休みぽい印象を受けたのはこういった雰囲気の作品を自分がおもに大学の夏休みに触れたからかなと考えている。ミスタードーナツでアイスコーヒー飲みながら読みたい。




宮崎夏次系『夢から覚めたあの子とはきっと上手く喋れない』を読んだ

最近まんがをどれを読んでも打ちのめされるなと。良すぎてなにも言えない。

それにしても(というかこのくらいのことしか言えないが)コマのカッティングが完璧。


池田浩明『サッカロマイセスセレビシエ』を読んだ

サッカロマイセスセレビシエ
池田 浩明
ガイドワークス
売り上げランキング: 349,761

これも去年からながなが読んでたのをようやく読み終えた。 新刊でもなくて、去年秋に移転したユトレヒトの新店舗に行ったときに買ったもの。

都内の個性的なパン屋とそのパンとその作り手を紹介する分厚い本。池田さんの情熱的な、情熱的すぎてほとんどギャグにすら感じられるほどの、パンの味と食感を表現する筆致がすばらしかった。


阿部共実『ちーちゃんはちょっと足りない』を読んだ

評判の作品ですね。あんまりにどこでも評判を聞くのであえて読まなくてもいいかと思ってしまったりしそうですが(それは僕ですが)、読んでみました。

これは…これはつらい。読むとすごい気持ちになるわけだがぜんぜんうまく言えないな。終わりもなにも終わってないようなのがおそろしい。


悪紫苑『ヴィーナス・アタッカーズ』を読んだ


ヴィーナス・アタッカーズ』 悪紫苑著

BCCKS / ブックス - 悪紫苑著『ヴィーナス・アタッカーズ』 http://bccks.jp/bcck/127334/info

12月から読んでた『ヴィーナス・アタッカーズ』をようやく読み終えた。作者の悪紫苑さんは初めて書いた小説だという前作『時空間エンタングル』からBCCKSで作品を公開してくださっていて、2年の執筆期間を経て発表された2作目がこの『ヴィーナス・アタッカーズ』。前作につづいてがっつりしたSF小説です。

人類により開発が進んだ金星——気温460度、90気圧、濃硫酸の雨が降る過酷な地表と、その上空50キロメートルに浮かぶ空中都市と飛行機たち——を舞台に、「大気圏内を飛びたい」という志願からまんまと金星に配属された飛行機乗りである主人公が、奇妙なめぐり合わせと不審なアクシデントを発端として大きな事件(?)に巻き込まれていく…という具合。前作の感想にも書いた通り、理学研究者である(んだと思う)著者の科学知識によるSF考証と、それをテコにして広げられた科学的大風呂敷の濃密さが持ち味ながら、ちゃんとエンターテイメントとしても最後まで(最後の最後まで…)おもしろく読めて満足した。

あとなんというからしいなあと思ったのはこの本の4章は「降下」というタイトルなんだけど、この章では確かに最初から最後まで「降下」しかしていないという。


RYU-TMR『RYU-TMRのレゲー解体劇場 セガハード編』を読んだ

前巻も読んでなかったのでどんな感じなのかなーと思って読んでみたんだけど、それほどはまる感じではなかった。ゲームの公式の設定やらキャラクターがマンガに出てくる感じは昔ながらのゲームネタマンガっぽくて楽しかった。
食マンガ的にレトロゲームが出てくるマンガがあるとおもしろいかな。謎解きがかならずレトロゲームネタになってるサスペンスマンガとか(詠坂 雄二『インサート・コイン(ズ)』が多少そんな感じだったか)。


初期アニメーションの「声」を聴く


『アニメーションの表現史」と銘打たれた本書は、20世紀初頭に誕生したアニメーション映画が、作画や音響の技術革新を経て商業化された勃興期においてどのような表現を獲得してきたのかを扱う論考集だ。といっても、アニメーション映画の通史を追うような内容ではない。むしろ、アニメーションの歴史のような概観ではかいつままれてしまうような、ごく最初期のアニメーション映画の魅力を知るためには、アニメーション以外の歴史を知る必要があるのだとこの本は言う。

わたしたちは古い技術や文化を、しばしば稚拙なもの、後の発達によってとうに乗り越えてしまったものとして捉えてしまう癖がある。もしこの『愉快な百面相』もそうした稚拙な技術によっているただの歴史的遺物に過ぎないのなら、わたしたちは右にあげたささいな疑問に対して、単純に技術や文化や配慮の欠如によって答えることができるはずである。
だが、はたして、それほど簡単な問題だろうか。答えは意外に長くなる。

細馬宏通 - ミッキーはなぜ口笛を吹くのか: アニメーションの表現史

本書に取り上げられるアニメーション映画のほとんどは、いまやアーカイブサイトやYouTubeなどでたやすく目にすることができる。本書はそれらの作品を実際に鑑賞しながら、その「現在の眼からは退屈な」作品を何度も観ながら読み進めるといい。作品のひとつひとつのディテールをなぞり、「なぜこの表現が選ばれたのか?」を問い直すなかで、アニメーションという雄弁な表現形式のそばにもう一つの雄弁な文化があったことが示されていく。一見緩慢で稚拙な誕生期のアニメーションに、フライシャー兄弟のロトスコープに、『蒸気船ウィリー』に、MGMアニメーションの音楽やルーニー・トゥーンズの饒舌に魂を吹き込んだのは、他ならぬ見世物小屋のヴォードヴィリアンやパフォーマーたちの手業であり、踊りであり、声である。

という、作品の線と声をたどる論考そのものに、自身が演奏家・ヴォーカリストであり一人語りの名手であるところの細馬宏通akaかえるさんの「語り」が感じられるところも本書の魅力ですね。