ウェス・アンダーソン『犬ヶ島』を観た

映画『犬ヶ島』 公式サイト


ウェス・アンダーソンの映画はあんまり得意でないというかもっと好きな人に譲りたいと思ってしまう感じだけど、今作はウェス・アンダーソンが日本(のデザイン)を題材にするとこうなるというところをリアルタイムに観られてよかった。日本語を扱ったグラフィックデザインとしてここまで濃さを感じるものを久々に見たんだけど、それでいてこれまで見知ってきたものとは何かが決定的に異なっていることも感じて冷や汗が止まらないみたいな。異星人にキャトルミューティレーションされるとこういう感覚になるのではないかと思った。


山田尚子『リズと青い鳥』を観た

『リズと青い鳥』公式サイト


『響け! ユーフォニアム』シリーズをいままでまったく観る機会がなく(『リズと青い鳥』がそのシリーズからのスピンオフ劇場版なのも知らなかった)、というかいわゆる京アニ作品というのにちょっと苦手意識があり(『氷菓』は地形効果もあって楽しめたんだけど)、山田尚子監督作品も『たまこマーケット』は評判を聞いてTVシリーズと劇場版ともに何度かチャレンジしたんだけどなじめなくて挫折している。関係ないけど、苦手なりに京アニブランドには作り手も受け手も了解する世界観やクオリティへの一貫性があるよなと思っているんだけど、劇場作品につけられるなんか地球がぐわーんて回るみたいなぼんやりしたイメージのモーションロゴはなんでああなっているんだろう。なにか文脈があるのかな。

そんな中ようやく先日観た『聲の形』は自分の苦手意識からするとわりとすんなり作品に入れて内容にも感銘を受けたところだったので、『リズと青い鳥』も飛び込みで観てきた。結論としてはとてもよかった。中盤まではなんとなく作品世界に気まずさを感じていたんだけど、これも振り返って考えてみると演出意図によるものだったのかも。お話としてはスポ根青春ものによく見られる定型(それこそ同じく牛尾憲輔さんが劇伴担当の『ピンポン』と同じだ)ともいえるものだけど、セリフの芝居や間の取り方が、少しづつながら勇気をもっていわゆる(日本の)アニメの枠(あるいは、僕がなんとなく京アニ作品に感じている窮屈さ)を乗り越えようとしているような感じがした。どこかで読んだ監督のインタビューによると、劇中登場する飛び立てる青い鳥を鳥籠に囲ってしまう寓話と、本編中ほぼ校舎内のみに限定したショット構成を重ねているとのことだったけど、この作品自体が、鳥籠から自分の羽で広い世界に飛んでいきたいという宣言のようにも思えた。ただ劇中劇にあたる「リズと青い鳥」パートはなんとなく消化不良というか、本編パートとの有機的な関係が観じれられなかったなー。

あとやっぱりこの「ふつうのアニメと違う繊細さ」には牛尾憲輔さんの音によるところも大きいのかもしれない。「エンドクレジッツソング」ことエンディングの最後の曲がよかったのでもう一度聴きたい。


リー・アンクリッチ・エイドリアン・モリーナ『リメンバー・ミー』を観た

リメンバー・ミー|映画|ディズニー公式


3月末に観た。予告を観た時点ではさほど興味を惹かれなかったんだけど、観てみたら物語をシンプルにとどめそのかわり「死者の国」という世界の構築に命をかけた作品でひさびさに素直にピクサーすごいと思った。もう一回観たい。表現力に乏しいフルCGで映画を成り立たせるための奇抜な設定とてんこ盛りででマニアックな脚本、というピクサーのアイデンティティからすると(タマフルでも言われてたけど)奇抜な設定をのぞくとディズニースタジオ的に成り立ってる作品なのかなとは思う。

いろいろよかったけど、印象に残ってるのはマーガレットの花びらでできた死者の国に渡る橋のイメージと、「嫌われていてで、覚えていて欲しい」というセリフかな。作品世界の切り口が慰霊+観光という感じでちょっとゲンロンっぽいなと思った(極彩色のビジュアルが梅ラボ作品に重なるところもあって)。さらにはVRコンテンツ『Coco VR』も含めるとサイバースペース=VR=ゲーム=ショッピングモール=テーマパークという問題系も接続できるんだと思うけどこちらはまだ未体験(やってみたい)。骸骨がギター弾くとこで『Mr.ボーン』とかも思い出したけど。


『宇宙よりも遠い場所』を観てる

TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」公式サイト


いつもわりと参考にしている4Gamerのアニメコラム「そうだ アニメ,見よう」で取り上げられてて、ちょっと気になったのでAmazonプライムで観てる。なにが気になったかっていうとあんまりアニメファン向けにしてないというか、どちらかというと「達者なまんがの絵」のようなフィーリングのキャラクターデザイン(キャラデザと作画監督はサムシング吉松さんなのだそう)と、EAbさんも指摘しているペールトーンの色彩設計の完成度なのかな。

内容も安定しておもしろい。内容的にNHKのプライムタイムのアニメでもよさそうなのに深夜アニメなのね。


TVアニメ『宝石の国』

TVアニメ『宝石の国』公式サイト


さわむら氏に推薦されて観ている。なんかいいですねこれ。原作(未読)によるものなのか、フルCGアニメだからなのか、プレスコで芝居が役者(声優)に任されてるみたいな制作体制によるものなのかわからないけど、日本のアニメっぽい過剰さがあまり感じられなくて、いい意味でたんたんとしているのがいい。主人公であるフォスフォライトのキャラクターが(声優黒沢ともよさんの演技もふくめて)絶妙で、本来とてもフィクション度の高い作品なのに、実写ドラマみたいな親しみが感じられるように思う。なのでこれ舞台っぽい人工的な演出で実写版とかも観てみたい気がする。

後半はフォスのキャラクターが大きく変化していくみたいなので、さてどうなるか。


「『21世紀のアニメーションがわかる本』刊行記念 土居伸彰×細馬宏通トーク」を聞いてきた

というわけで2冊読んだうえでブックファースト新宿での土居さんと細馬さんのトークを聞いてきた。ブックファーストの書店イベントって初めて参加したと思うけど思ったよりこぢんまりした会場で、司会からの各人紹介みたいな手続きもなくわりといきなり細馬さんから核心の質問が飛ぶようなガチ感のあるイベントだった。ゲンロンカフェで『個人的なハーモニー』についての土居さんと佐々木敦さんがトークしたときに冒頭のプレゼンを受けての佐々木さんの第一声が「なんかいきなり学会発表ぽくなりましたね」だったけど、今回も別の意味でイベントというよりも学会感があった。僕はまだ観てないのいまいち判断できないけど、『21世紀〜』での『聲の形』の扱いをについては異論が多い(『聲の形』という作品を「『私たち』の時代の作品」として捉えるのは捨てるものが多くないか、という)ところのようでトークはかなりの部分その評価ポイントのすりあわせに修正していた。

お二人の著書にサインももらったけど(土居さんにはようやく挨拶できた。以前土居さんがBCCKSで個人的に自身のアニメーション評論集をまとめて紙本を発注してくれたことがあって、そのときにネット上でやりとりして以来初めての対面だった)、細馬さんに『CupHead』を見たか聞いてみようと思ってわすれてしまった。


細馬宏通『2つのこの世界の片隅に』を読んだ

青土社 ||批評/文明論:二つの「この世界の片隅に」


こっちも途中まで読んで止めてたので読み終えた。もちろんマンバ通信でのコラム連載は読んでいたしその時点で驚嘆してたわけだけど、評論集として書籍化された本書は当然ながら各コラムがそれぞれの着眼点(「ことば」「かく」「くらし」「からだ」「きおく」)にそって再構成されていて、なかでも最終章になっている「きおく」は、テキストを読み解くにとどまらず、読み進めていくと作品の鍵を開けてその中に入り、本来ならば知り得ない「秘密」を知ってしまうような感触があり素晴らしかった。「すずの描く絵はほとんどが誰かに向けて描かれている」という指摘も細馬さんならではの指摘でどきっとした。


土居伸彰『21世紀のアニメーションがわかる本』を読んだ

21世紀のアニメーションがわかる本 | 動く出版社 フィルムアート社


トークショーの前にと思って。アニメーションドキュメンタリーというジャンルの重要性の話など土居さんの前著『個人的なハーモニー』のおさらい的な部分もありつつ、本書の要旨である「21世紀のアニメーション」がどこに向かっているかいう議論はかなりアクロバティックというか乱暴ともいえる整理が炸裂していた。個別の作品の扱いがこれでいいのかという話は多そうだけど(僕はそこまで気にはならなかった)、「『私たち』の時代」の作品とは何かという定義については腑に落ちたというか、いわゆるポストインターネットの世界観とか、インディーゲームのナラティブとか、気になっているものを同じ枠組みで見ることができるんじゃないかと思った。

つまり『動物化したポストモダン』なんじゃないかという気もちょっとしたけど。


『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション 1』を観た

映画『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』


映画の日に。ダンケルクかベイビードライバーもっかい観ようかなと思いつつ時間が合わなかったので観れるやつのなかから選んだ映画だったんだけど、これは劇場で観てよかった。冒頭から30分ほどのテンションの高い新作パートの福眼感の高さと、アホかと思うような構成のTVシリーズ再編集パート。奇をてらっているというよりも純粋に作りたいものを精度高く作ったというベテランDJのロングミックスになってて楽しかった。

こっちのアクスペリエンス7MVのほうが作品の印象に近い


『クエイ兄弟 ―ファントム・ミュージアム―』を観た

クエイ兄弟 The Quay Brothers|松濤美術館


クエイってQuayって綴るんだな。そしてもともと東欧出身なのだろうと思ってたらペンシルベニア出身でフィラデルフィアの芸術大学を卒業後にRCAに進学したという経緯なのだそう。

アニメーション制作に使った小道具を再構成してジオラマにした「デコール」という展示が多数あって、それがおもしろかった。とくにレンズがはめ込んであってのぞき込むとマペットと舞台が迫ってくるタイプのがすごかった。ちょっとVRの感覚に近かった。

ストリート・オブ・クロコダイル

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