藤田祥平『手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ』を読んだ
手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
IGN Japanのレビューやコラム連載も楽しみにしている藤田祥平さんの初長編小説。『電脳奇譚(IGNのコラム)』などを読んでいてもこれどのくらい実体験でどのくらい創作なのかなと気になっていたけど、「半自伝的小説」と銘打たれたこの小説でもその多くが実体験からと思われる語りで構成されていて、ヴォネガット流と言えばいいのかな、世界に強烈なNOをつきつけらればらばらになった人間の諦観と、その魂が自分が生きるべきもう一つの世界を探す彷徨とをモザイクにしたような小説だった。とてもよいと思う一方でこういうスタイルの小説に感化されるには自分が歳をとりすぎてしまったなとさびしくも感じた。
奥さんによると、居間に置いてあったこの本を小5の長男が見つけ、ゲームに関係する話らしいことを了解して「これ読んでみようかな」と言ったのだそうだ。奥さんが帯の惹句(『母がリビングで首を吊ったとき、僕は自室で宇宙艦隊を率いていた』)に触れたらじゃあやめとくと引いたそうだけど、若くそして僕よりよっぽどゲーマーの素質がありそうな彼がこの本を読んでいたらどうなっていただろうか。