メルマガ『サイエンス・メール』の鳴海拓志さんインタビューシリーズがおもしろい
サイエンスライターの森山和道さんが発行している老舗メルマガ『サイエンス・メール』は、森山さんが注目するさまざまな分野の研究者を直接取材したロングインタビューをほぼノーカットで数ヶ月にかけて配信するというメディア。僕はまだ学生のころに森山さんのウェブサイトを知って『サイエンス・メール』の前身である無料メルマガ「NetScience Interview Mail Home」を購読して以来(有料メルマガになってからはしばらく購読していなかった時期もありますが)、なかなか他のところでは得られない最新の基礎研究の世界の話や研究者がどんなことを感じながら研究しているのかを知ることができる貴重な読み物として楽しんでいる。
で、今回はその『サイエンス・メール』で2月から連続配信されている(まだ継続中)鳴海拓志さんのインタビューシリーズがすごいおもしろいのでもっと話題になるべきという話をしたい。鳴海さんの研究はVR、ARなどIT業界的に近年(何度目かの)ホットなトピックで、メディアアートやゲームとかいわゆるメディア芸術に隣接した表現でもありWebメディアの記事になったり紹介される機会も多いの研究成果としては「知ってる知ってる」というものも多いんだけど、そうした視覚やそのほかの感覚に介入する技術の積み上げを足がかりにして、人の認知そのものをチューニングし現実の行動をサポートするツールが作れないか、という鳴海さんの目標がたっぷり語られているところがとても興味深い。
インタビュー冒頭が
※○:森山さん ■:鳴海さん
○VRって、最近はだいぶ知られて来るようになりましたけど、まだまだ一般の方って、「バーチャルリアリティ(VR)」って、「おもしろ体験を作る物だ」ぐらいの感覚しかないと思うんですよ、多分。
■うん。
○それってちょっともったいないなと思っていて。その裏にある認知科学的な知見であるとか、あるいはそういうサイエンスにも踏み込んで行けるツールでもあるんだよ、というところを、できれば読者の方にも感じてもらいたいなと思っていて。それには鳴海先生がぴったりなんじゃないかなと思いまして、今回インタビューをお願いしました。
■それは、ありがとうございます。
というところから始まるんだけどまさにそういう内容になっていて、VR系の開発者だとか人の行動を変えるデザインに興味を持っている人には必見のインタビューだと思う。「ボイスチェンジャーによる擬似的な女声と機械的なボディコンタクトという人を馬鹿にするなという装置でも、男性が事実やる気になる」みたいな、VTuber的にビジネスチャンスを感じる知見も語られているし。
上記の知見はこの公開講義でも紹介されてた
あと『サイエンス・メール』のいいところは、研究者として道を定める以前の学部時代のわりとふわふわした話だとか、今の研究に至る長い経緯や人のつながりだとか、あとまだ研究になっていないアイデアだとか、かなり雑談にちかい話もカットされずに読めるところだと僕は思っているんだけど、鳴海さんの回では「駒場キャンパスを歩いていたら岩井俊雄さんに会ったことが今の研究につながる原点」みたいな余談的ないい話もあっていい。インタビューシリーズはまだ終わってない(そろそろ終わりかな?)ので今後も楽しみ。
まぐまぐで個別販売もされているそうです。