『中京大学 × プラネタリウム × アートピア 『The Edge of Infinity』』を見た

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これ見たいなとツイートしていたら、さわむら氏(ucnvさんと高校生のころからの旧知)がじゃあいっしょに行こうかと誘ってくれたので遠征して見てきた。いやー、今年観たもののなかでぶっちぎりですごい映像体験だった。


味仙で胃をグリッチさせてる

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まず今回初めて知ったんだけど名古屋市科学館の「Brother Earth」(ブラザー工業によるネーミングライツド施設なんだけど、名前のコズミックファンク感がすごい)というプラネタリウム施設自体がかなりすごいものだった。世界最大だという内径35mのドームスクリーンに、最新鋭の光学式プラネタリウムによる実物さながらの星空が投影できるのはもちろん、22台(だったかな?)のプロジェクターで8Kの全天周映像・動画を投影できるデジタルプラネタリウムシステムがある(併用も可能なのだそう)。冒頭の設備解説のなかでスーパーカミオカンデの内部写真が投影されたりしてたけど、カミオカンデみたいな物々しさはないにせよ、このドームに映された全天周映像にはそれ級の崇高さがあり、巨大スクリーン大好きなのでそこだけでもけっこう感動した。

そして、今回のイベントがものすごく狂っていた。名古屋市科学館的にはたぶんプラネタリウム夜間上映の一つとしてプログラムされているもので、鑑賞層も10月にはここで「お月見の夜」を観たのであろう地元の科学館サポーターで年配の方が大半なのかなという感じだったんだけど、今回の『The Edge of Infinity』ではそうした客層に全く容赦をしない色彩、スピード、回転、点滅、グリッチによる映像とアブストラクトな音響からなる上演が行われ、そしてここが重要っていうか狂っているなって思ったとこだけど、そうしたきわめて前衛的な上演と上演の合間には、通常のプラネタリウム夜間上映と同様なのであろう穏やかなナレーションとわかりやすいスライドによる、ビックバンや宇宙の果てにまつわる天文科学プレゼンテーションが差し挟まれるのだった。体験した印象としては、イベントの構成がグリッチ画像よりも壊れていた。ただこの事故的な構成によりたまさか生まれたディープさと独特の浮遊感というのが確実にあり(『ジェットストリーム』みたいな深夜ラジオ番組を想像してほしい)、そこがよかった。こういうミスマッチはたぶん東京のイベントだったら起きていないことで、グリッチが好きなひとは地方のイベントにこそ行くべきなのではと思う。

『The Edge of Infinity』は中京大学人工知能高等研究所 メディア工学科所員の井藤雄一さん、上芝智裕さん、カール・ストーンさんに、ゲストとして真下武久さん、ucnvさんを招いて、それぞれ映像、サウンド担当で2人づつのチームとなって(ちょっと今手元に資料がなくてチーム構成が書けないけど)、ドームスクリーンとサウンドシステム(サウンドシステムも多チャンネルからなる独特なものだったみたい)に合わせた3つのパフォーマンスを上演するというもので、それぞれ魅力的なものだったんだけど、やはりトリをかざったucnv x カール・ストーンのパフォーマンスについて書いておきたい(ちなみにカール・ストーンさんだけはプラネタリウム現地のブースからのライブパフォーマンスだった)。

ucnvさんのグリッチ/データモッシュ映像としてはTerpentineで確立された作風(破壊風?)の延長上にあるセッションになっていたのだと思うんだけど、考えてみれば、われわれはいかにも画像らしい矩形のスクリーンがグリッチしたものしか見たことがなかった。世界最大の径をもつ球面にプロジェクションされた、ほぼ実空間をとして知覚される全天周のそれを見たことがなかったなーーーーという感想で、Terpentineの後半にある画面下からせり上がってくるグラデーションみたいなグリッチがあるじゃないですか。あれがプラネタリウムに映すと「地平線」に見えるんですよ。画面上から色がしみ出すようなグリッチ映像は、天頂から色が降り注ぐように見えるわけですよ。キーフレームが抜かれて壊れた色面が突如動き出すあのデータモッシュ独特のドリフトが全天周で起きると、われわれ自身がドリフトし始めたように感じるわけですよ。エモすぎて思わず文体も変わってしまったわけだけど、人工物である画像に起きる「事故」がグリッチなのだとして、他方自然は作られておらずしたがってグリッチもしないのだとして、あの日観たグリッチ映像は僕が見た限りでもっとも「自然」なグリッチ映像だったように思う。


Turpentine from ucnv on Vimeo.


とにかくもしかしたら二度と観られない映像体験が得られてラッキーだった。イベント終了後ちょっとだけucnvさんと話す機会があって聞いたけど、今回の上演にあわせてかなり特殊な制作をされたそうで(8K4K(訂正)の連番pngを何日もかけてレンダリングしたとのこと)、一度だけなのはもったいないので再演とかあるといいな。ていうか上映環境としての「Brother Earth」とてもいいので変態アニメーションナイトとかもあそこで上映してほしい。