エド・キャットムル『ピクサー流 創造するちから』を読んだ

ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法
エド・キャットムル 著 エイミー・ワラス 著
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 2,466

評判のよい本だけど、読んでみると確かにすばらしい本だった。ピクサーの作品みたいだった。

読む前に見ていた紹介では「ブレイントラスト」と呼ばれるピクサーで行われている作品を向上させるためのフィードバック・ループの方法論にふれたものが多かったような気がするけど、僕は変化と偶発性の受け入れとそれらをコントロールできるという誤った認識についての執拗な警告(8章「変化と偶発性」・9章「隠れしもの」)が心に残った。原理的にパターンによってしか構築されないコンピュータ・グラフィックスやそれによるアニメーションの技術を開拓するに飽きたらず、そこに命を吹き込む人間の創造性を観察し尽くした「研究者」の言葉として受け取った。

そもそも人間の脳は、それを考えるようにできていない。脳は反対に、視界や音、相互作用、世の中の出来事などにパターンを認識しようとする。パターンが存在しなくてもパターンとして見てしまうほどそのメカニズムは深く根づいている。これには霊妙な理由がある。人間はパターンや結論を脳内に記録することはできるが、偶発性そのものを記録することはできない。偶発性は、その本質からいってどこからともなく現れ、予期できないため、分類を許さない概念だ。知識のうえではその存在を認めているが、脳はそれを完全に把握することはできない。そのため、目に見える測定可能で分類可能なものよりも意識に与える影響が小さいのだ。

エド・キャットムル - 『ピクサー流 創造するちから』 8章「変化と偶発性」