イェスパー・ユール『しかめっ面にさせるゲームは成功する: 悔しさをモチベーションに変えるゲームデザイン』を読んだ

しかめっ面にさせるゲームは成功する|書籍|株式会社ボーンデジタル


MIT Pressの「Playful Thinking」というゲームにまつわるひとつの論点をゲーム研究者など専門家が解説した短い本のシリーズで、日本的にいうと「MITゲーム新書」みたいな感じなのかな(たぶんもうちょっとアカデミックなシリーズなんだろうと思うけど)。この本は「ゲームにおける『失敗』」とは何か、というテーマで議論が展開されていた。われわれは一般に失敗を嫌い避けたがるが、優れたゲームはプレイヤーが「楽しく失敗できる環境」をつくりだす。その意味でゲームは「失敗の芸術」(art of failure これが原題)なのであり、この本ではゲームのデザインにおいて失敗がどのように組み込まれていて、それをプレイヤーがどう感じるのかが分析される。コンパクトながらも新鮮な論点がいっぱいあっておもしろかった。


週間ファミ通2017年4月20日号『特集 開発秘話から紐解く新たな『ゼルダ』の姿』を読んだ

週刊ファミ通 2017年4月20日号 | 雑誌紹介 | dマガジン


スタッフインタビューで具体的なプロジェクト/プロダクトマネジメントとして行っていたことが語られていておもしろかった。「300人で1週間テストプレイ」がすごいというよりそれが可能なチームが構築されていたことがすごいんだと思っていたので、それがなぜ可能だったのかが知りたい。

藤林 でも、スタッフたちが勝手に”特命委員会”を発足して乗り越えてくれたんです。
(…)
藤林 開発ルームの僕たちの席のうしろに、ちょうど大きな机があって、そこで開かれていた会議です。難しい懸案事項の関係者が集まって、問題を解決して仕様に落とすんですね。解決するまで終わらない会議。
(…)
藤林 パーテーョンでギチギチに仕切られた環境ではなく、ドンと大きいテーブルがあって、それを背中越しにみんなが聴いているんです。すると「それって……」という感じで、他のスタッフが加わったりするんですよね。いままで見たことがない、おもしろい進めかたでした。

青沼 デザインに関して言うと、昔はひとつの世界を作るのに、端から組み立てていくスタイルでした、でも今回は違っていて、フィールド全体のクオリティーを徐々に上げていくスタイルで作っています。最初はペンペン草が吐いているだけの場所を、歩いて確かめながら、そこにネタをどんどん足していったんです。足しながら、この場所はこういう形であるべきという方向性が決まると、デザイナーが手を入れる。そしてさらに、その上を歩いて要素を加えて、どんどんフィールドの密度を濃くしていきました。

藤林 (…)『スカイウォードソード』の反省点のひとつとして、スタッフの人数が多くなると、若いスタッフの意見が上に届きにくくなるるんです。今回は、その意見を吸い上げる仕組みとして、ゲームプレイと平行して、専用の掲示板と、全員の動きをモニターできるツールを作りました。
(…)
藤林 掲示板は、ゲームをプレイして”いいな”、”よくないな”と思ったことを匿名で書き込めて、ほかのスタッフがルピーで”いいね”を入れる仕組みです。”いいね”が貯まると、ルピーの色が緑から青、赤になるので、チームでいちばん気になっている部分が、ひと目でわかるんです。モニターツールは、ワールドマップで、いまプレイしている全員が、ゲーム内でどんな風に動いているか、記録がとれるものです
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藤林 プランナーの席に大きなテレビを置いて、誰が、どんなふうに進行しているか、レベル調整がうまくいっているかを確認していました。

語られている手法は納得感あるけど、一方でこのくらいはモダンな大規模ゲームの(に限らないか)開発プロジェクトではやるかなという気もするので、たんに任天堂的なイノベーションだっただけなのか、それとも他プロジェクトから見ても斬新なのか、どっちなのかな。

藤林 神獣はロマンとの融合でしたね。地形とはまた別の問題として、デザイナーから「フィールドにロマンが欲しいんだ」という意見がでて、ドデカイ敵を検討し始めたんです。(…)
藤林 新しい仕組みをこれ以上増やすわけにはいかないけれど、ロマンは欲しい、ということで、ひねり出したアイデアが、デカい敵をそのままダンジョンにしてしまい、戦うのではなく、攻略することが目的の動くダンジョンだったんです。(…)
滝澤 敵か味方か分からない巨大なものが動いていることが、誘導として大事なんですよ。(…)

あと上記物理エンジンベースのゲームプランニングとアートディレクションに関して語られていた「物理(ゲーム)エンジン v.s. ロマン」の対立はなかなかおもしろいなと思った。「物理」対「ロマン」の軸にいろんなゲームをプロットするとなにか見えてきそう。


『PC88ゲームの世界』


久しぶりに秋葉原に行ったので秋葉原BEEPで買った。まだ全部内容見れてないけど(というかデータベースみたいなものなので通読するというものでもないだろうけど)、いろんな意味でおもしろい。PC88のゲームの歴史を追えるという部分はもちろん、完全なアマチュアが見よう見まねで始めたとほぼしきコンピュータソフトウェアの(一応「ゲーム」という共通認識はあるとはいえ)パッケージ化やその流通の変遷(それがものすごいスピードで規模を拡大して定型を確立していく過程)とその土台としての80年代初頭以降の日本文化が垣間見えるところが。

あとこのソフト自体が(たぶんもともとWebで公開してたコンテンツなんだろうと思うけど)CSS以前のWeb1.0感ばりばりのhtmlコンテンツなので、今の眼から見ると扱われている82年頃のゲームに近いプリミティブさがあるようにも思えてそこもいい。


おすそわけプレイ

会社にデザイナーのクロカワさんがNintendo Switchを持ってきたので、任天堂言うところの「おすそわけプレイ」モードでいくつかのゲームをプレイした。『スーパーボンバーマンR』『いっしょにチョキっとスニッパーズ(体験版)』など。

まず話題になったのは、出先でSwitchで二人でゲームをプレイすると、思いがけずも本当に任天堂のCMみたいな風景になるということだった。あの小さいJoy-Conを大人が両手で握って持ち、机にスタンドで立てられたこれまた小さいSwitchのモニタを何人かで囲もうとすると、おのずとNintendo Switch的な空間が生まれるらしい。ゲームがボンバーマンだったので正直プレイの新鮮さはゼロだったけど、努力せずとも体験としてハードの狙い通りの空間が生まれるのはすごいと思った。

とはいえやっぱSwitch本体はマルチプレイヤーゲームのディスプレイとしては小さすぎではあって、そのあと試しに職場にあるモバイル外部モニタ(On-Lap 11インチ)をつないでプレイしてみたらちょうどいい感じだったんだけど、そうするとただのコンソールゲーム機になってNintendo Switch的空間は消失したのだった。このNintendo Switch的空間の現出が、ポケモンGOのように可視化されることが促されるようなゲームが登場すると、Nintendo Switchはヒットするのかも。


電ニコファミゲーマー『ゲームの企画書:任天堂・青沼英二×スクエニ・藤澤仁』を読んだ

まず2Dゲームで開発、社員300人で1週間遊ぶ!? 新作ゼルダ、任天堂の驚愕の開発手法に迫る。「時オカ」企画書も公開! 【ゲームの企画書:任天堂・青沼英二×スクエニ・藤澤仁】


話題になってたエントリーをちょっと遅れて読んだんだけど、語られている内容がほんとにすごくて感動したので書いておきたい。タイトルにもある、制作を止めてその時点のゲームを最初から最後までプレイすることで、スタッフ全員が作品全体を把握することを徹底した、そのために1週間制作を止めたこともあったというエピソードはピクサーでもそこまでしないだろという逸話だった。

そうしてできあがったという『ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ザ・ワイルド』をNintendo Switchでプレイしているのでよりすごいなと思っているところもあって、今回のゼルダの狙いだったという「当たり前を見直す」みたいなスローガンってそれ自体は別に変わったものでもないし、ともすればこれまでの任天堂だって何度も言ってきたようなものなんだけど、それがちゃんと作品としてここまで体現されていることってそうそうないように思う。その「思い切りのよさが功を奏している」感じはNintendo Switchにも感じられるところで、これらの仕上がりというのがディレクターの世代交代のような属人的な要因なのか、それともこの記事で語られているような開発手法が画期的だったのか、そうだとしてこれまで(任天堂のこの10年ほど)とはどう違ったのかというところが知りたい。


Nintendo Switchと『ゼルダの伝説 Breath of the Wild』

Nintendo Switch|Nintendo


ゲームハードを発売日に買ってプレイするような几帳面なことをした覚えがあんまりないんだけど(ゲームボーイとバーチャルボーイはもしかしたら発売日だったかな…)、Nintendo Switchは予約開始のタイミングでtwitterで騒いでいたのを目にしてちょうど手が空いていたのもありついつい予約してしまった。言われている通りいま買ってもゼルダ以外のめぼしいソフトはなくて、子供ふくめ多人数で楽しめるゲームをもう一本買いたいと思いつつ、『1-2-Switch』はちょっとあの値段では買う気にならないし、ボンバーマン…よりはスペランカーのほうがよさそうだけど同時発売じゃないし…と悩んだあげくゼルダだけ購入(『1-2-Switch』は安くなったらほしい)。

で家で週末触ってみたんだけど、予想外の展開として奥さんや子供(9歳)もゼルダにすんなりはまってかなり前のめりでプレイし始めた。二人ともマイクラに慣れているので世界を好き勝手に探索できるゲームとして違和感なく楽しめるみたい。単純に今回のゼルダが会心の出来なのもあると思うけど。あそこに何があった、川はどうやって渡ったとそれぞれの体験を話し合えるのが楽しい。ただ子供や奥さんが帰宅ご家で遊ぶためには僕が平日持ち出して外出先で遊ぶようなことはできなさそう。あと子供が「今度マルチプレイでやりたいね!」と目を輝かせて言ってきたのにはできるといいよねえ…と遠い目をしておいた。

Switchのハード的にも(OS的にも)満足感が高くて今後の展開も楽しみになっている。強いていうと、PS4やWiiUのよかったところにワイヤレスのコントローラにヘッドフォン端子があってヘッドフォンをしてコントローラを持ったままたち歩いたり姿勢を変えたりがしやすいというとこがあったんだけど、Switchではそういうスタイルにはできないのが残念ではあった(携帯モードにすればできなくもないけど)。


『あそぶ!ゲーム展-ステージ2 ~ゲームセンターVSファミコン~』を観た

あそぶ!ゲーム展-ステージ2 ~ゲームセンターVSファミコン~ SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ


そろそろ会期が終わりそうなので遠征。前回(ステージ1)より解説や開発資料展示が多くなってるなと思った。ゼビウスやドルアーガの塔の開発資料はガン見したかったけど子連れだったのでほとんど見られず残念。

ゼビウス初見(たぶん)の子供(9歳/5歳)の時の反応で新鮮だったのは、ドモグラムが道路に沿って進んできたのを喜んでたり、「あ、基地っぽいとこがある」「なんで海のなのに戦車が!」などゲームのキャラクターやシーンを受け止めて気にしてたとこと、アンドアジェネシスを何度かミスして超えた後のエリアでザカートが出てきたら「あ、これボスが出そう!」と空中敵のパターンをすぐに覚えて反応してたとこ。ゼビウスはやっぱキッズの心をとらえるところがあるんだろうなーと思った。そういえば、ゼビウスの地形や地上構造物の配置(あとドモグラムとかグロブダーの動き)を自由にできるマップエディタってあってもよさそうだけど見たことないな。

今回のゲームを触った子供の感想は、「どれも難しすぎてすぐに死んじゃう」というもので、まあその通りだなという感じだった。ゲームの展示ってもっといい形ってあり得るのかなあ。


『カルチョビットA』をプレイした

カルチョビットA公式サイト


発売されたタイミングで始めてたカルチョビット、ちまちまプレイしていたらようやくステップリーグを抜けてN2リーグに昇格した。いわゆるスマホゲー的なアプローチャビリティの低さやリテンションの仕組みを持ってない昔気質のゲームなのでいっかい面倒くさくなると(具体的には帰り道が寒くて手が冷たいとか)離れてそれっきりになりがちなんだけど、やりだすとやっぱり楽しい。とりあえず課金もしたことなのでもうちょっと続けたい。

それにしてもこのゲームの最初の時点での「なにをどうしたらしたらいいかのわからなさ」は圧倒的なものがある。サッカーを知っている人ならもうちょっとスムーズに理解できるものなのかもしれないけど、でもなんかそういうことでもない気がする。たとえば大戦略みたいなウォーシミュレーションであれば兵器について詳しい人ならわかることがそれを知らない初心者にはわからないということがあるだろうけど、プレイにあたってなにをしたらいいかわからないようなゲームにはならない。なぜかというとスタート時点では自軍と敵軍は十分離れていて、最初は敵のほうにむけて動くことしかできないものからだ。ターン制であれリアルタイムであれ、ふつうのゲームなら最初そのようにしかできないプレイヤーの操作(「スーパーマリオは右に進むようにデザインされている」というやつ)と、それに応じるゲームのインタラクションが最小単位で確かめられ、それによってゲームの「つかみどころ」というのが得られるものなんだけど、『カルチョビット』はそういう手続きがまったく感じられない。『カルチョビット』のインタラクションって『サッカーの試合』というものすごいでかい単位しかなくて、しかもそのサッカーの試合というのも最初に渡されるチームというその時点ではブラックボックスなものが、相手と戦うのを(ほぼ)見守ることしかできない。まともな神経のゲームデザイナーならもっとかみ砕いたゲームにするはずで、そうではなくて「こういうゲームをやってほしい」と言っているんだと思う。

この最初ひたすらなんにもわからなくて、当たって砕けて(ほんとに砕けて)いるあいだに多少形になってきた気がする…気がするだけか? いやなんとかなってきた…あーでもまだだめだわ、の感じ何かなと思ったんだけど、「仕事」のそれですよね。「サッカークラブ育成シミュレーション」ってのはウソで、「雇われ監督としての自分育成シミュレーション」なんだな。


『パラメーター』をプレイした

パラメータ | モゲラ


とグニャラさんがつぶやいてて見に行って最初「?」と思ったんだけど、画面に区切られた矩形をクリックしてゲージを増やしたり減らしたりすることで、プレイヤーのパラメーターを増加させつつ画面の矩形がだんだん埋まっていくのを楽しむ、というアブストラクトなRPG的なゲームだった。これたぶん昔からあったゲームなんだろうけどたぶん初めてプレイ。

こんな感じでまずはゲージが0になっている矩形(なんか「ミッション」というものらしい)をクリックして経験値と金を貯めて、レベルアップによるステータス分配やアイテムでパラメータを上げて、

強くなってきたら黄色い矩形(敵らしい)をクリックして倒す。

この繰り返しなんだけど、この抽象的で無味乾燥な画面と、それがルールの理解によって見えるものが変わっていく過程が楽しくて最後までプレイできた。


『and i made sure to hold your head sideways』をプレイした

and i made sure to hold your head sideways by q_dork


無料のインディーゲームだいたいエントリだけ見てプレイせずじまいなことが多いんだけど、これはたまたまプレイに至って、しかもとてもよかった。ゲームっていうか、インタラクティブな仕掛けのある絵本というかマンガというか、ハイパーカードのスタックというか、そういう感じのやつ。

最初の画面に出ている通り、矢印を上下左右に押すと画面に表示されたモノクロのドット絵っぽいグラフィックがレイヤー単位でばらばらに動くようになっていて、とある方向に動かすとグラフィックの要素がある情景のイラストを形作り、また添えられた短い文章を読むことができる。そのあと矢印キーを話すと次のシーンに移動する(これがちょっとわかりづらい)。最後までこれだけ。

game-play

泥酔して意識を失った友人を介抱したある日の深夜のエピソードが語られているらしい(よくわかってない)けど、そのストーリーがわからなくても、過去のかすかな記憶をたぐり出す過程のような感覚がゲームのプレイに凝縮されていてとても魅力的。音楽もよいのでヘッドフォンで聴きながらプレイするといいと思う。