V.A.『Diggin In The Carts - A Collection Of Pioneering Japanese Video Game Music』

出るの忘れててちと遅れて購入。hallyさんのライナーついてるならCDで買おうとタワーレコードで探したところ、ゲームミュージックコーナーにはなくてちょっと残念だった(クラブ・テクノコーナーにあった)。

リリース情報で曲目を見た段階で変わったセレクションだなーと思っていて、実際聞いてみても最初は結構「?」という感じだったんだけど、しばらく聴いていたらなんとなく聴きどころがわかってきた。おそらく「メロディ、リズム主体でなく短いシーケンスの繰り返しからなる」かつ「音源チップのサウンドの特徴(魅力)が出ている」トラックが選ばれた結果、有名な、あるいはポップで勢いのあるステージ1とかの曲はなく、あまり有名でないゲームのそれもステージ5とか中盤ステージのトリップ感のある曲ばかりが集められたゲームミュージックコンピレーションになったというのがこのCDなんだと思う。激シブすぎる。

でも「短いシーケンスの繰り返しからなる」「音源チップのサウンドの特徴(魅力)が出ている」という観点で聞き込むとたしかになかなかいい(収録時間の問題なのかループが少ないのが残念)。『源平討魔伝 BIGモード』とかは有名な名曲だけどグルーヴィーな曲に聞こえて新鮮だし、『ワルキューレの伝説』のエレキマン王の曲なんかはなぜかPCエンジン版のアレンジで収録されてるんだけど、このCDの並びだとアブストラクトなチップチューンに聞こえる。3曲収録されているゴブリンサウンド(知らなかったけどメサイヤのサウンドチームの名前なのかな)の曲もいい。あとはまさに「ディギン・イン・ザ・カーツ」で発掘された、リードトラック『THE 麻雀・闘牌伝(スティーヴ・ライヒばりのミニマルミュージック)』をはじめとする日の当たらないゲームの知られざる名曲たちも最高(セレクションの文脈でいうと複数収録されている斉藤博人さんの曲がそこだけ「いわゆるゲームミュージック的な曲」なのでちょっと不思議ではあった)。

国内盤に寄せられたhallyのライナーはこのアルバムにふさわしいもの(批評的にセレクションされた初めてのゲームミュージックのアルバム、という)ではあったけど、全曲徹底解説的なものを勝手に期待してたのでちょっと拍子抜けだった。ちなみにOTOTOYだとデジタルで変えてこのライナーもpdfでついてくるのに後から気づいた。


田中治久(hally)『チップチューンのすべてーーゲーム機から生まれた新しい音楽』を読んだ

チップチューンのすべて All About Chiptuneーーゲーム機から生まれた新しい音楽 | アイデア - 世界のデザイン誌


素晴らしい本だった。『現代ゲーム全史』を読んだとき、コンピュータと音の関わりやゲーム音楽についての言及が妙に少ないなと思ってたんだけど、後にこの本が控えているのがわかっていたからなのか…と思ってしまった(違うかな?)。

コンピュータから再生される「電子音」の誕生と、その発展としての音源チップ、つまり「楽器」ではなく「コンピュータの一部としての音源」が、どのように発展し、どういう形で人々の耳に触れ、そして誰がそこに、のちに「チップチューン」と呼ばれることになる固有の表現を見いだしていったのか。それを膨大な資料からの丹念な研究によって明らかにする、コンピュータ音楽史研究家としてのhallyさんの集大成のような本。これを2017年に日本語で読めるのを感謝したいとしか言いようがない。

僕はこの本の区切りでいうと、国内の(商業)ゲーム音楽隆盛期から国内パソコンでのチップチューン的な価値観の断絶期(第2章 チップチューンの成立 II 国内編)で知識が止まっていたので(恥ずかしながらhallyさんの活動は知りながらもVORCで情報を得ることをしていなかった)、SIDチップとロブ・ハバードの仕事を中心とした海外でのチップ音楽の価値観やトラッカー音楽とデモシーンを通じたチップチューンの胎動期についてはとても多くのことが知れたし、その散り散りに存在したコミュニティーが、他ならぬインターネットとハードウェア・エミュレーションという真にコンピュータ的な技術によってその障壁が崩され、「チップチューン」というひとつのシーンが大きく立ち上がったのだとする記述は、hallyさんの筆の熱もありとても感動的に読んだ。

インターネットとサウンド・エミュレーションの普及がある程度進んだ段階で、人々は気付き始める。言語が違っても、使用機種が違っても、音楽の趣味は共有できるかもしれないと。この種の音楽が好きな人々は、世界中にいるかもしれないと。PSGやSIDといった特定のデバイス名だけでは言い表せない、音源チップ「全体」を包含する、より大きな世界があるかもしれないと。隔てられた世界が繋がり、ひとつのシーンを形成するに至ったとき、今日的な意味での「チップチューン」、すなわちトラッカー音楽に限定されない、音源チップの単純波形に由来するすべてのサウンドを包含する「チップチューン」の時代が始まる。

『チップチューンのすべて』 - 第3章 IV “モダン・チップチューン” 前書きより

注釈に資料URLがたくさんあって、一部歴史的音源の視聴リンクなんかもあるのでぜひどこかでクリックしたいと思いリンク集を探したんだけどまだ作られていないようだったので、ちくちく入力して勝手リンク集をつくった。注釈のほかディスクガイド・アーティストのアルバム情報ないしbandcampへのリンクや(リンク先が雑なのであとで修正したい)、原著中で代表的に扱われているゲームや楽曲、デモが現時点で見られるyoutubeリンクなんかもざっくり入れてあるのでこれから読まれるかたは傍らでリンクを開いたりするとよいんではないかと。



下半期にSoundcloudで聴いた曲から8曲選んで調べる(インスト編)

ボーカル編の続き。


下半期にSoundcloudで聴いた曲から8曲選んで調べる(ボーカル編)

soundcloudで聴いてlikeしてた曲から8曲選んであらためてこれって誰のどういう曲なのってのを調べた。上半期のはこれ


かえる目『切符』

切符
切符
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かえる目
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先日のかえるさんワンマンショーで先行購入(1日だけだが)したかえる目『切符』を聴いてる。素晴らしいのはあたりまえなのだが、例によって伝えにくいよさでもある。まずはアルバム収録曲名を見ていただこう。

  1. ラーメン日和
  2. ドローン音頭
  3. オリンピック
  4. 隣人
  5. くまとジャケット
  6. 手鞠歌
  7. よしおくん
  8. Without You
  9. 異常気象
  10. 老スター
  11. 城はキャッスル
  12. 三人姉妹
  13. 希望の火
  14. 終点まで一駅

『ドローン音頭』気になるでしょ? 「ドローン」という言葉に日本人ならだれでもなぜか刺激される「和ごころ」を音頭としてとらえた名曲でぜひ聴いてほしいわけだが、じゃあ聴こうとCDをプレイするとまず聴こえてくるのは1曲めの『ラーメン日和』で、これがまたとんでもない名曲で、『ドローン音頭』にたどりつく前に泣いてしまうわけ。

『ラーメン日和』がいいのは、歌がうたわれるとき、まさにそのとき、ラーメンがすすられ、打ち明け話がはじまり、そしてラーメンがのびていくように感じられることだと思う。「ラーメンがのびてく」という、進行形の美しさ。「歌が走り出す」という比喩があるが、「歌のラーメンが伸びていく」のがこの歌だと言えるだろう。

もう一曲あげるなら『手鞠歌』かな。先日のライブで弾き語りバージョンも聞けたこの曲は、いわゆる「あんたがたどこさ」をルンバ調(でいいのかな?)でカバーしてるわけだけど、この不穏さはなんなの! 「あの歌は変なんですよ、会話してるはずなんだけど、途中で片方が突然ソロで歌い始めるの」とライブのときにかえるさんが話していたけど、その突然事に及ぶ感じ、そしてそれが繰り返す感じ。かえるさんが低速録音したボーカルのピッチを上げた『帰って来たヨッパライ』方式で収録されているのもふくめ、なんというか、昭和の犯罪の匂いがする。こんな音楽はほかで聴けない感じがとてもする。


「かえるさんワンマンショー@シーモアグラス」

絵本の読める小さな喫茶店 SEE MORE GLASS(シーモアグラス)

先日のかえるさんに偶然会ったあと、かえる目のライブ情報を見ていたら、今度は自宅のものすごい近くでもライブがあることがわかって予約した、という話を奥さんにしたら、そんなめぐり合わせが2度もあるのは運命的だからと、ライブ前にちょっとお邪魔して家族で挨拶した。結婚式の2次会でかえるさんに弾き語りライブをお願いして9年。感慨。

ライブのほうはいつもの感じで楽しかった。新譜『切符』収録曲の「手毬歌」の弾き語りバージョン(わらべ唄の「手毬唄」をそのまま詩にした曲で、ギターに加えて男声と女性の掛け合い(声色を変える)をすべてかえるさんが担当することになるので超大変。途中かえるさんも「あれ? (声が)どっちだっけ?」となってた)が聞けたのはレアだった。前座だった人形劇ユニット(?)「テクテク」も、予想外のうれしい楽しさで子供にも見せたかったな。シーモアグラス店内のいわゆるコージーな感じ(ライブの予約のときに「お店がすごく狭いので…」とすごく恐縮された)にどちらもとても合っていた。


『劇場アニメ「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック』

劇場アニメ「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック
コトリンゴ
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サントラも買って聴いてる。『みぎてのうた』『たんぽぽ』の歌詞をちゃんと知りたいというのが主な購入理由だったんだけど、サントラとしても素晴らしい。コトリンゴさんもいい仕事してるな。

『悲しくてやりきれない』の本編では聞けない2番の美しい展開がよかった。あと『たんぽぽ』の歌詞ね。何重にも意味がかさねられた「わたし」と「あなた」。


KIRINJI『ネオ』

ネオ(初回限定盤)(DVD付)
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新生KIRINJI一枚目の前作『11』は明らかに気合入ってる感じ(とくに『進水式』『だれかさんとだれかさんが』『雲呑ガール』『fugitive』の並びのスキのなさ!)だったけど、今回はわりといい湯加減というか季節感のある(夏から秋を過ぎて寒くなっていく)感じがあってこれはこれでよかった。コトリンゴさん作曲・ボーカルの曲が、僕はわりとコトリンゴさんのソロの楽曲は苦手なほうなんだけど、KIRINJIアレンジだと適度に風通しのよいポップさがあって好みだった。


石野卓球『LUTATIQUE』

LUNATIQUE
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石野 卓球
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これは大変よかった。ひさしぶりに音楽そのものが楽しくて他の聴覚コンテンツ(ラジオとか)を押しのけてアルバムをリピート再生している。シャッフルで聴いても楽しい。

ご多分にもれずDOMMUNEのトーク+DJも観た(OTOTOYの川村氏がインタビュアーだったのでdigitiminimiでパブリックビューイングみたいになってた)けど、あの強烈なパーソナリティの持ち主が別の顔としてこういう完全にコントロールされたアルバムを作れるのに素直に感服した。