平松るい『かど松 2018 特集 いぬ』を読んだ

年賀雑誌かど松2018 特集いぬ | かど松屋さん


判型で意表をつくやつはやってるな

kotaro tanakaさん(@doppac)がシェアした投稿 -


判型が変わった第4号。ひらまつさんのデザイン&発注スキル向上によるものか異種の用紙をまぜこんだ製本になってたり挟み込みの別冊まんががついてたりとジンっぽさが増している(あと紙質がグラビア誌っぽいからかいままでになく雑誌を読んでる気分になった)いっぽうで(あの唐突な)人物取材/インタビュー記事がなかったのは残念に思った。連載陣では細馬さんのぼんやりエッセイが優勝。

これまでのかど松レビュー


週間ファミ通2017年4月20日号『特集 開発秘話から紐解く新たな『ゼルダ』の姿』を読んだ

週刊ファミ通 2017年4月20日号 | 雑誌紹介 | dマガジン


スタッフインタビューで具体的なプロジェクト/プロダクトマネジメントとして行っていたことが語られていておもしろかった。「300人で1週間テストプレイ」がすごいというよりそれが可能なチームが構築されていたことがすごいんだと思っていたので、それがなぜ可能だったのかが知りたい。

藤林 でも、スタッフたちが勝手に”特命委員会”を発足して乗り越えてくれたんです。
(…)
藤林 開発ルームの僕たちの席のうしろに、ちょうど大きな机があって、そこで開かれていた会議です。難しい懸案事項の関係者が集まって、問題を解決して仕様に落とすんですね。解決するまで終わらない会議。
(…)
藤林 パーテーョンでギチギチに仕切られた環境ではなく、ドンと大きいテーブルがあって、それを背中越しにみんなが聴いているんです。すると「それって……」という感じで、他のスタッフが加わったりするんですよね。いままで見たことがない、おもしろい進めかたでした。

青沼 デザインに関して言うと、昔はひとつの世界を作るのに、端から組み立てていくスタイルでした、でも今回は違っていて、フィールド全体のクオリティーを徐々に上げていくスタイルで作っています。最初はペンペン草が吐いているだけの場所を、歩いて確かめながら、そこにネタをどんどん足していったんです。足しながら、この場所はこういう形であるべきという方向性が決まると、デザイナーが手を入れる。そしてさらに、その上を歩いて要素を加えて、どんどんフィールドの密度を濃くしていきました。

藤林 (…)『スカイウォードソード』の反省点のひとつとして、スタッフの人数が多くなると、若いスタッフの意見が上に届きにくくなるるんです。今回は、その意見を吸い上げる仕組みとして、ゲームプレイと平行して、専用の掲示板と、全員の動きをモニターできるツールを作りました。
(…)
藤林 掲示板は、ゲームをプレイして”いいな”、”よくないな”と思ったことを匿名で書き込めて、ほかのスタッフがルピーで”いいね”を入れる仕組みです。”いいね”が貯まると、ルピーの色が緑から青、赤になるので、チームでいちばん気になっている部分が、ひと目でわかるんです。モニターツールは、ワールドマップで、いまプレイしている全員が、ゲーム内でどんな風に動いているか、記録がとれるものです
(…)
藤林 プランナーの席に大きなテレビを置いて、誰が、どんなふうに進行しているか、レベル調整がうまくいっているかを確認していました。

語られている手法は納得感あるけど、一方でこのくらいはモダンな大規模ゲームの(に限らないか)開発プロジェクトではやるかなという気もするので、たんに任天堂的なイノベーションだっただけなのか、それとも他プロジェクトから見ても斬新なのか、どっちなのかな。

藤林 神獣はロマンとの融合でしたね。地形とはまた別の問題として、デザイナーから「フィールドにロマンが欲しいんだ」という意見がでて、ドデカイ敵を検討し始めたんです。(…)
藤林 新しい仕組みをこれ以上増やすわけにはいかないけれど、ロマンは欲しい、ということで、ひねり出したアイデアが、デカい敵をそのままダンジョンにしてしまい、戦うのではなく、攻略することが目的の動くダンジョンだったんです。(…)
滝澤 敵か味方か分からない巨大なものが動いていることが、誘導として大事なんですよ。(…)

あと上記物理エンジンベースのゲームプランニングとアートディレクションに関して語られていた「物理(ゲーム)エンジン v.s. ロマン」の対立はなかなかおもしろいなと思った。「物理」対「ロマン」の軸にいろんなゲームをプロットするとなにか見えてきそう。


平松るい『かど松 2017 特集 とり』を読んだ

年賀雑誌かど松2017 特集とり | かど松屋さん


あー今年もかど松買わなきゃなーと思って放置してるうちに2月になっていたところ(つまり忘れていたところ)運良くひら松さんのツイートを見かけて思い出したので注文した。雑誌デザイン力は着実に上がっているようで、「年賀雑誌」とかいうよく考えると聞いたことのない文言がさも当然のように雑誌ロゴに組み込まれていて(オリジナルの封筒のヘッダにも書いてあった)頼もしい。

内容もよくなってきた気がするな(実際は一年に1回づつしか見ないからなんとなくだけど)。服部みれいさんはよく知らなくてえーと恋愛呼吸のひとだっけくらいの認識だったけど、雑誌編集ゴコロのありかたみたいなのがよくわかってよかった(弁当とか料理の盛り付けで宇宙を創造するのが大好きだとか)。

ucnvさんインタビューもおもしろかったんだけど、ちょっと疑問があったのでtwitterで質問した。

u (…)ノイズ表現って何でもそうだけど、再生機器の出力の解像度が上がることで、芸術表現の環境が整ってくるので、そこに対するカウンターとしてのローファイ欲みたいなものが組み合わさったところでグリッチ表現が確立されたんですよね。ーーで、よく言われる例として、ファミコンにカセットを半分さした状態にすると画面がぐちゃぐちゃになるのがグリッチの原体験という人が居るんだけど、ぼくはそれ、無理矢理結びつけているだけっていうか…

 あー。

u ファミコンの頃に用語としてグリッチって無かったし。

 ファミコンはずいぶん前ですねぇ

u ファミコンの画面とグリッチを結びつけている人ってドット絵表現によくあるピクセルを正方形に巨大化しているようなイメージをしているんだと思うんだけど。実際にファミコンを再生するブラウン管って全然そうじゃないし、むしろぼやけているので、頭の中でねつ造されたローファイのグリッチがあるなと僕は思っているんですよね。

平松るい『かど松 2016 特集 とり』 表紙のはなし ucnvインタビュー

で、こういうやりとり。

上に引用した部分のあとに、グリッチの定義についての話も出ていた(し、過去のucnvさんの立場として定義を重視しているように思っていた)ので、ファミカセの斜め差しがグリッチに当たらないとしたらどういう意味なのかを確認したかったんだけど、ucnvさんのインタビューでの意図としてはファミカセ斜め差しが原理的にグリッチかどうかとは関係なく、今日的なグリッチ表現の文脈とファミコンのようなローテクゆえのカオス的なグラフィック(ローファイ)は全然別のもので雑にいっしょにするべきではないということと理解した。くわしくはみんなもかど松を買って確認しよう。

これまでのかど松レビュー


『20世紀 ゲームと、夢のアーケード』と『HobbyJapan extra 模型のホメ方』を読んだ

20世紀 2016年5月号
20世紀 2016年5月号
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クレタパブリッシング (2016-03-31)

『20世紀』って初めて手にとったな。想像してたほうの『ゲームってなんでおもしろい?』ぽい資料価値メインの(正確に言うと資料価値があるというよりも、永久保存版的な雰囲気を楽しむ感じの)本だった。ゲームじゃなくて「アーケード」特集(なのでピンボールとかホットスナック自販機の記事もある)なのが新鮮で、当時のアーケードの写真がもっと死ぬほど載ってるような構成だとよかったなと思った。


ホビージャパンエクストラ 2016 Spring (ホビージャパンMOOK 718)

ホビージャパン (2016-03-31)
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ホビージャパンEXTRAってまだあったのか…と思ったら2014年に新体制って復刊した感じみたい。特集がおもしろそうだったので買ってったんだけど期待通りおもしろかった。プラモデルの技術や見どころについてもっと詳しく読みたい。


平松るい『かど松 2016 特集 さる』を読んだ

かど松2016 特集さる | かど松屋さん

去年に引き続き平松るいさんの年賀ZINE『かど松』を取り寄せて読んだ。2年目だけどすでに「新年改まったころに読むもの」として定着した感じがあるなあ。年賀状はもう形骸化した儀式になってて参加したくなさが強いけどこういう別のかたちの年次刊行物にしてしまうといいのかもしれないな。

表紙がバナナのテクスチャになっているのにはしばらくしてから気づいた。


『SWITCH Vol.34 No.1 ◆ ゲームの30年 1985-2015』を読んだ

SWITCH Vol.34 No.1 ◆ ゲームの30年 1985-2015

スイッチパブリッシング (2015-12-20)

わりとちゃんとゲームの(正確には「日本のコンソールゲームの」かな)30年を興味深く掘り下げた特集になってておもしろかった。さやわかさん選のゲーム関連本ガイド「ゲームを考える10冊」がしぶい。

あとスプラトゥーン開発者インタビューでの天野氏の発言「新規IPではダジャレ重要」が説得力あった。ゲームには動詞の発明だけじゃなくてダジャレの発明も必要なんだな。

天野 最初から「尖ったものを作ろう」という意識はありましたが、そうすると全く刺さらなかった人には「自分には関係ない」と思われる可能性もあります。今回はゼロから作っているのでなおさら、「ダジャレでもいいから、そうである理由をつける」というのは、すべての領域で意識しました。

天野祐介 - 『SWITCH Vol.34 No.1 ◆ ゲームの30年 1985-2015』 Splatoon開発者インタビュー

月刊MdN 2015年 5月号『体験する未来、そのメカニズム アート×テクノロジー』を読んだ


MDNって初めて買った気がするな。クリエイターのための雑誌なのにチームラボ展についての記事にクリエイターが全然でてこないのがなんかすごい。まるででてこないので意図的なんだろうけど。


平松るい『かど松 2015 特集 ひつじ』を読んだ

平松るいさんというのは女子美の学生さんで、modern fartでの細馬宏通さんの連載「うたのしくみ」の巻頭イラストや単行本の表紙イラスト、二階堂和美「とつとつアイラヴユー」MV(アニメーションVer.)などを手がけてらっしゃるイラストレーターさん。とつとつアイラヴユーアニメーションVer.は気合入った仕事で未見でしたらぜひどうぞ(これアニメじゃないVer.も観るとすばらしさがよくわかるんだけど、いまだにじみ 【デラックス・エディション】買わないと観れないっぽい)。

で、その平松さんがこの新春にお年賀がわりの自主制作雑誌「かど松」というのを作ったので希望者に配布しますよとtwitterでツイートされていたので所望したところ、2月になっても届かないので変だな―と思いつつ、これはきっと平松さん忘れているだろうから今年の年末あたりに届いてなかったよと問い詰めてやろうとか意地の悪いことを考えていたらなんのことはない家族が受け取ったものが荷物の山に紛れ気づいていなかっただけだった。

それでようやく「かど松」を読んだのだけど、これがすごいよいもので大変ありがたい気分になった。もう2月も中旬だけど正月のあらたまった気分にもどされたかんじ。なんでかとても気持ちのよい雑誌になってました。

そして収録原稿のなかでも白眉とされる伊藤ガビン渾身のなんの役にも立たないテキスト「おモチ、お正月」が素晴らしい。媒体上たぶん読んでるひとがそうとう少なそうなので、ここに少しクリップしておきます。

かど松を定期購読なさっているみなさん、はじめまして。神奈川県で小さな食堂を営んでいる伊藤と申します。ウソですが。
むかしは東京で編集の仕事などをちょこまかしていたのですが、いまは出身地である神奈川県の海沿いに根をおろし、ちいさなちいさな食堂をはじめました。うそですけど。
うちの食堂は、料理をする私がどこか名のある料理店で修行したわけでもないですし、特別な仕掛けも、眼を見張るような眺望も、なんにもないんですよね。でも、魚を見る目だけは、なぜか子供の頃からありましてね。魚を見ると、それがすごくおいしい一匹かどうか、なぜだかわかる。ド素人の僕だけど、なぜかそこだけは自信がある。だから刺身定食を、うちの主力商品にしているんですよね。って自分の魚を見る目に自信持ちすぎですかな。うそなんですけども。
えーと。うそばっかりかいててもしょうがない。せっかく新しい年になったんだから、ほんとのことを、ほんとのことだけを、正直に書いていきたい。ほんというと、僕の店で出しているなかで一番おいしいのは、お刺身定食じゃあないんですよ。
宮城県に移り住んだ友人が大事に育てている仙台牛を使った牛たん定食が最高なんです。今年は未年っていうじゃないですか。それはそれとして牛たん定食だけは自身を持ってオススメできます。これだけはマジ。うそですけど。
いや、マジメな話、神奈川県の、湘南と呼ばれるようなこの地域でね、仙台牛の牛たんをオススメって、ちょっとブランディング的にどうなんだろう?って思うんですよ。望まれてないでしょ?
例えばあなたが明日京都旅行に行ったとしましょう。そこで友達にね、なんかおいしいもの連れてってよ、って言った時に連れて行かれた先が九州ラーメンの店。これどうなんです?釈然としするのか、しないのか。どっちなんですか。どちらでもない。はい正解です。何でも二択で答えられると思ったら大間違い赤間違い黃間違いですよ。人生はそんなにシンプルではない。スティーブ・ジョブズの言葉です。
死んだ人の言葉はどうでもいいか。そもそもそんなことジョブズは言ってないし。
牛たんの話ですよ。

《以下延々とつづく》

伊藤ガビンかど松 2015「おモチ、お正月」より