山本裕介・今井勝信『IntelliJ IDEAハンズオン──基本操作からプロジェクト管理までマスター』を読んだ

IntelliJ IDEAハンズオン ――基本操作からプロジェクト管理までマスター | Gihyo Digital Publishing … 技術評論社の電子書籍


IntelliJ IDEAの本が出て電子書籍がある、というような話がTwitterで流れてきて、お、そんなのあるのかと思って調べてみたら、たしかにKindleにはあるんだけどhontoでは売ってない。あららと思いきや、あらためて考えたら技術評論社は直販の電子書籍サイト「Gihyo Digital Publishing」を持っていて、ここで買ったほうがpdfに加えてリフロー型のEPUB版もダウンロードできる(Kindle/KOBOはいわゆる固定EPUB(画像)型の電子書籍のみ)のでそっちで買った。まあKindleとかの電子ストアで買ったほうが値引きがあるとかポイントがつくとかはあるんだろうけど、スマートデバイスで読むよりはPCで開いて検索できたほうがいい技術書については書籍データがダウンロードできる直販で買ったほうがよいと思う。

あと、技評のリフローEPUBってすごいよくできてるんだよね。いわゆる横書きの技術書フォーマットはCSSのスタイリングと親和性が高いからというのもあるんだろうけど、ショートカットキーの囲みとかも再現されてて紙の本と比べても遜色ない。もちろん検索もできるし(他方こだわって作られているせいでこのリフローEPUBを他の電子書籍ストアには出せないんだと思う。固定EPUBの本を電子取次で配信せずKindle/KOBOにしか出してないのがなんでかはわからないけど、基本直販にしたいけどKindleは無視できないというとこなのかな)

ちなみに本の中身のほうはほぼ使っている機能の紹介でそれほど役に立つものではなかったけど、条件式のあとに拡張子のようにキーワードを書くと(arg1>arg2.ifのように)構文に展開されるPostfix completionという機能は知らなくてへー!と思った。


Akihiko Taniguchi/Chie Taniguchi『nothing happens』


TRANS BOOKSで買った谷口暁彦さん、タニグチチエさんによる写真集『nothing happens』、物理写真集やポスターも素敵なんだけど、付録2である『nothing happens』アプリ版が予想以上におもしろかったというか、何か別のものの原型のように思えた。

『nothing happens』は、谷口さんの先日まで展示されていた新作『何も起きない』からいくつかのシーンを切り取って写真集にまとめたもので、それを買うとついてくるUSBメモリに納められているアプリ版『nothing happens』はその電子版…といいつつpdfとかではなくて「写真集を再現した3Dモデルデータをリアルタイムレンダリングで読めるアプリケーション(Unity製)」になっている。

そこまでは知っていてなるほどおもしろいなと思って買ったんだけど、実際に起動してみて驚いたのは(実際はよく読むと上のツイートにも書いてあるんだけど)この「写真集を再現した3Dモデルデータ」が配置されているのは、この写真集の題材である『何も起きない』という作品の舞台である「あの部屋(の3Dモデルデータ)」なのであり、つまりこれは、作品の一部を編集した本がその作品の一部であることが、現実として目の前で体験できるアプリケーションなのだった(起動したままにしておくとアプリ内で時間が経過して日が暮れたり昇ったりもする)。何も起きていないかわりに大変なことになっていた。

あと、今回このアプリを体験してみて、「読書環境も含めて提供されるVRによる未来の本」というものが他にもあり得るんじゃないかと感じた。本1冊のために専用のシーンを作り込んだりするのはオーバースペックだろうなとは思いつつ、なんとなく「VR読書」みたいな話には鼻白むものを感じていたなかで今回の体験は新鮮だった。「VR『はてしない物語』」とかあったら読んでみたいよね。

ちなみにアプリ版『nothing happens』は書いてないけどCmd/Ctrl+qで終了だそうです(ESCキーは効かない)。

Trans Booksで買った谷口さんの「nothing happens」

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nothing happens

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TRANS BOOKSに参加した

TRANS BOOKS | 2017年11月4日(土)、5日(日) 11:00 - 18:30 @ TAM コワーキング 神保町


メディアの横断をテーマにしたブックフェアというかポップアップストアというかグループ展というかのイベント『TRANS BOOKS』が11月4日と5日に行われていて、BCCKSも参加していた。実行委員から「BCCKSは本が様々なメディアを横断するサービスとしてテーマに合致すると思う」というオファーをいただいてなるほどと思ったものの、BCCKSはあくまで出版プラットフォームなので「作家」として何かするのも変な話で、BCCKSからはじゃあむしろ『TRANS BOOKS』のドキュメント本をリアルタイムで制作、出版するとかかな? とかアイデアを出していた。ちなみにこの「アートイベントに『アートイベントをリアルタイムにドキュメントした本』という作品で参加する」というのは以前『トランスメディアーレ2014』に参加したときにやってたスタイル(このときのは結果的には松本弦人の驚異的な作業量からなる松本弦人の作品ですが)。


Buch—transmediale』 tmbccks著

いま見てもすごいなこの本

今回はイベント的にライブドキュメントを残すべきものでもないのがわかったので、ディスカッションのすえプラットフォームらしく「BCCKSで出版された本のQRコードを使ったポスターを作り、QRコードリーダーを使った偶然的な本との出会いの場をつくる」という企画になった。さらに最終的には単なるポスターではなく「BCCKSの本のレイアウトに、文字の代わりにBCCKSの本のQRコードが組まれている」というポスターを作ることになり、それを可能にするBCCKS側の実験的機能追加もしつつ形にした。このへんは今後に生かしたい。

というわけでどういうイベントになるのかよくわからないまま当日を迎え、ちょっとだけ会場にもおじゃましてたけど、客としてはものすごくおもしろい「本屋」になっていたと思う。「メディアの横断」や「メディアとしての本を更新する本」に僕が関心があるからというのもある(し、そもそも興味のある作家が参加してたことも大きい)けど、ひさしぶりに「これもこれもこれも欲しい! 全部買いたい!」という気分になった。 いわゆる長机で出展者が売り子をする即売会スタイルじゃなかったのもよかった(それだったら絶対今回みたいにたくさん買う気にならなかったと思う)。単価が高めなのもよかったというか、高くても「本」だとがばがば買ってしまうというあのマジカルなやつが発動してた。運営のみなさまにはぜひとも次回の開催を期待したい。


ルチアーノ・フロリディ『第四の革命 情報圏(インフォスフィア)が世界をつくりかえる』を読んだ

第四の革命


弊社代表石橋の推し哲学者ルチアーノ・フロリディの単著としては初の邦訳(でいいのかな?)。フロリディさんは「有形無形問わずあらゆるものは情報であり、情報の『よさ』を中心とする情報倫理を構築すべき」という非常にラジカルな世界観を提唱する情報哲学者なんだそうだけど(参考:情報/ITアーキテクトのための「使える!フロリディ情報哲学」)『第四の革命』はその情報哲学の入門編ともいえる内容で、ドライブ感ある文体や独特の(センスオブワンダーを感じる)造語が読みやすく訳されていてたいへん楽しめた。

この本のいう「第四の革命」とは、コペルニクス、ダーウィン、フロイトに次ぐ第四の脱人間中心パラダイム(の転換期)として、昨今のITC技術による情報爆発とその自律エージェント化を位置づけるもの。人間環境のデフォルトと化した人工物を「新しい自然」と見なしたり、IoTやスマートエージェント技術の描く未来像に人間中心主義の終わりを見いだすような発想はとりわけ新しいというわけでもないかなと思いながら読んでいたんだけど、人間を情報エージェントととらえたとき、これまで「人間性」を基礎づけてきたシステム(たとえばプライバシー、たとえば政治)がどのような物理的制約のもとで成り立ってきたのか、そしてすでにわれわれが手にしている高度に発展し民主化されたICTが、そうした「人間性」をどのように作り替えているのか、つまり、すでに情報エージェントであるわれわれが、いま「人間性」とは実際には何だと思っているのかをここまで詳細に網羅的に分析していると説得力が違うなと思う。そしてやっぱり数々繰り出されるキャッチーな造語が「第四の革命」感あって最高。inforg(情報有機体)! e-mortal(e-不死)! 情報摩擦! 政治的アポトーシス!

「世界の見方を変える」という意味ではまさしく哲学書なんだろうけど、いわゆる「哲学書」的な語彙は少なく前提知識も不用だし、むしろIT技術書のようなプラクティカルなセンスにあふれている(「社会契約説では人は法的にオプトアウト」みたいなパンチラインがぼんぼん出てくる)のでまあ分厚いけど恐れずにノリでどんどん読んで情報圏インフォスフィアに取り込んで作り替えていくといいと思う。

石橋さんとオーバーキャスト大林さんのフロリディ対談は、あんまり本書の内容に触れてなくて残念だったな。この本の内容にこだわった読書会的なやつ希望。


細馬宏通『2つのこの世界の片隅に』を読んだ

青土社 ||批評/文明論:二つの「この世界の片隅に」


こっちも途中まで読んで止めてたので読み終えた。もちろんマンバ通信でのコラム連載は読んでいたしその時点で驚嘆してたわけだけど、評論集として書籍化された本書は当然ながら各コラムがそれぞれの着眼点(「ことば」「かく」「くらし」「からだ」「きおく」)にそって再構成されていて、なかでも最終章になっている「きおく」は、テキストを読み解くにとどまらず、読み進めていくと作品の鍵を開けてその中に入り、本来ならば知り得ない「秘密」を知ってしまうような感触があり素晴らしかった。「すずの描く絵はほとんどが誰かに向けて描かれている」という指摘も細馬さんならではの指摘でどきっとした。


ロロイ『塔』を読んだ


』 ロロイ著


不思議な塔を上っていく、という体の超超短編集。電子書籍のショートショート集をスマホで読むとそうそうこういうのでいいんだよなーと思うけど(BCCKSだとヨシカワシオさんの『懐中小話』もいい)、このロロイさんの『塔』は「不思議な塔の各階の描写」というルールになってるのが本全体としてもフレッシュでとてもいい。ショートショート版『100かいだてのいえ』っていうか。ちょっとゲームブック感もあるし。

他の人もこのルールで本をつくったのも読みたい。


土居伸彰『21世紀のアニメーションがわかる本』を読んだ

21世紀のアニメーションがわかる本 | 動く出版社 フィルムアート社


トークショーの前にと思って。アニメーションドキュメンタリーというジャンルの重要性の話など土居さんの前著『個人的なハーモニー』のおさらい的な部分もありつつ、本書の要旨である「21世紀のアニメーション」がどこに向かっているかいう議論はかなりアクロバティックというか乱暴ともいえる整理が炸裂していた。個別の作品の扱いがこれでいいのかという話は多そうだけど(僕はそこまで気にはならなかった)、「『私たち』の時代」の作品とは何かという定義については腑に落ちたというか、いわゆるポストインターネットの世界観とか、インディーゲームのナラティブとか、気になっているものを同じ枠組みで見ることができるんじゃないかと思った。

つまり『動物化したポストモダン』なんじゃないかという気もちょっとしたけど。


Duang-Daao『ドゥアン・ダーオのトムヤムクン』を読んだ


ドゥアン・ダーオのトムヤムクン』 Duang-Daao著


初めて判型実寸のブログパーツ使ってみるけど、この本はBCCKSのレイアウトを使いこなしてとても美しい魅力的な本に仕上がっているのでこの見開きリーダーをPCで読んでみてほしい。上の「タチヨミ」から。

しかもデバイスサイズにしてもきれいになってるとこもいい。


ドゥアン・ダーオのトムヤムクン』 Duang-Daao著

種明かしするとこの本を作っているのはBCCKSの開発にも参加している鍵っ子が作った本なんだそうで、BCCKSの機能を使いこなしてあるのは当然といえば当然なんだけど、それだけでもなくて、編集者やブックデザイナーでなくても「こういう本にしたい」「読者にこういう気持ちになってもらいたい」という意図が明確にあればそのような本がつくれるということだと思う。『犬ウォーターメロンシュガー』のぶつ切りにした生魚みたいな乱雑さも個人出版本の痛快さではあるけど、他方でこういう魅力的な本が無料プラットフォームで作れるんだヨということも主張していきたい。

作りのことばっか言ったけど内容もいいんだよなー。タチヨミ以降のとこではトムヤムクンのいろいろなレシピはもちろんのこと、トムヤムクンに捧げられたマンガや小説もあれば、日本で出版されているタイ料理の本10冊12レシピから、材料や分量の平均を求めた「日本の平均のトムヤムクン」(!)レシピ、タイのみそ汁とも呼ばれるトムヤムクンと、日本のみそ汁の境界を探るため、みそ汁にレモングラスやパクチーといったトムヤムクンのスパイスを混ぜていき味わい、それに「トミソシル」みたいな中間状態の料理名(!)をつけていくという「みそ汁とトムヤムクンの境界を探ろう」ワークショップのレポートまで。本の概要からはまったく予測もつかない素晴らしい内容。電子版400円でいろんな味が楽しめる本。

BCCKS / ブックス - 『ドゥアン・ダーオのトムヤムクン』Duang-Daao著


ラリイ・ニーブン『リングワールド』を読んだ

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これもSF仕事関係で今回初めて触れてみて、いわゆるスペースオペラ的な小説に触れてこなかったせいかさわりを読んだら非常に新鮮でおもしろかったので、せっかくだからちゃんと読もうと図書館で借りて読み切った。けっこう長いしいちいち描写から地球人の常識から離れた宇宙人の容姿とか世界の様子を思い浮かべるのが大変で、読み切る前に返却期限が来てしまって何度か借り直したりしつつなんとかという感じだったけど、ちゃんと最後(広げた風呂敷は何一つ畳まれてないけど小説の終わりとしてはここしかない、というラスト)までおもしろかった。


アラン・ケイ『アラン・ケイ』を再読した

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エクリの水野勝仁さんの連載を読んでいて、ふとアラン・ケイの本を読み直してみようと思ったので図書館で借りてきた。前読んだのはあんまり定かじゃないけど、Oh!Xに荻窪圭さんの書評かなんかで知って発売当時に買ってたはずなので高校2年か3年の春休みとかに読んだんだと思う。地元のスキー場で雪が融けた後のグラススキー用のリフトの監視みたいなバイトがあって、それをしながら読んでた記憶があるので。

で読み返してみたら、言うまでもないけど今読んでもまったく古びていないインターフェイスの思想が語られた論文群で、あらためて読んでもこのころにこういうことを言っていたのかと新鮮な発見が多かった(「コンピュータ・ソフトウェア」のなかでスプレッドシートについて「セル宇宙のシミュレーションをするもの」だと説明するところとかは今回よんで初めてなるほどと思った)。

最後の講演録「教育技術における共立の対立」はたぶん前読んだときは読み飛ばしてた気がするんだけど、今回読んでここが一番おもしろかった。アランケイいわく、成功する製品は「人間の深奥の欲求にこたえる“増幅装置(アンプ)”になるもの」である必要があるが、その人間の欲求とは大別して「夢想したい」と「コミュニケート」したいに分けられると。この2つの定義は欲求の定義が(あまり細かくは語られないものの)独特で、たとえば飛行機のような時空間を圧縮するテクノロジーは「コミュニケートしたい」欲求をかなえるものになるのだという。では「夢想したい」はどういう欲求なのかというと、これは「自分だけのファンタジーを制御したい」という欲求だと考えればよい。ファンタジーとは、例えば言語、スポーツ、ゲーム、音楽、コンピュータシミュレーションなど「単純明快で制御可能な世界」のことで、つまり世界を単純で制御可能なものに見せてくれるテクノロジーが人々の心をつかむのだと説明されていて、この説明は非常におもしろかった。この定義でいくとSNSは「コミュニケートしたい」欲求に応えるようでいて「夢想したい」のほうの欲求に応えているんだな。