TRANS BOOKSに参加した

TRANS BOOKS | 2017年11月4日(土)、5日(日) 11:00 - 18:30 @ TAM コワーキング 神保町


メディアの横断をテーマにしたブックフェアというかポップアップストアというかグループ展というかのイベント『TRANS BOOKS』が11月4日と5日に行われていて、BCCKSも参加していた。実行委員から「BCCKSは本が様々なメディアを横断するサービスとしてテーマに合致すると思う」というオファーをいただいてなるほどと思ったものの、BCCKSはあくまで出版プラットフォームなので「作家」として何かするのも変な話で、BCCKSからはじゃあむしろ『TRANS BOOKS』のドキュメント本をリアルタイムで制作、出版するとかかな? とかアイデアを出していた。ちなみにこの「アートイベントに『アートイベントをリアルタイムにドキュメントした本』という作品で参加する」というのは以前『トランスメディアーレ2014』に参加したときにやってたスタイル(このときのは結果的には松本弦人の驚異的な作業量からなる松本弦人の作品ですが)。


Buch—transmediale』 tmbccks著

いま見てもすごいなこの本

今回はイベント的にライブドキュメントを残すべきものでもないのがわかったので、ディスカッションのすえプラットフォームらしく「BCCKSで出版された本のQRコードを使ったポスターを作り、QRコードリーダーを使った偶然的な本との出会いの場をつくる」という企画になった。さらに最終的には単なるポスターではなく「BCCKSの本のレイアウトに、文字の代わりにBCCKSの本のQRコードが組まれている」というポスターを作ることになり、それを可能にするBCCKS側の実験的機能追加もしつつ形にした。このへんは今後に生かしたい。

というわけでどういうイベントになるのかよくわからないまま当日を迎え、ちょっとだけ会場にもおじゃましてたけど、客としてはものすごくおもしろい「本屋」になっていたと思う。「メディアの横断」や「メディアとしての本を更新する本」に僕が関心があるからというのもある(し、そもそも興味のある作家が参加してたことも大きい)けど、ひさしぶりに「これもこれもこれも欲しい! 全部買いたい!」という気分になった。 いわゆる長机で出展者が売り子をする即売会スタイルじゃなかったのもよかった(それだったら絶対今回みたいにたくさん買う気にならなかったと思う)。単価が高めなのもよかったというか、高くても「本」だとがばがば買ってしまうというあのマジカルなやつが発動してた。運営のみなさまにはぜひとも次回の開催を期待したい。


Duang-Daao『ドゥアン・ダーオのトムヤムクン』を読んだ


ドゥアン・ダーオのトムヤムクン』 Duang-Daao著


初めて判型実寸のブログパーツ使ってみるけど、この本はBCCKSのレイアウトを使いこなしてとても美しい魅力的な本に仕上がっているのでこの見開きリーダーをPCで読んでみてほしい。上の「タチヨミ」から。

しかもデバイスサイズにしてもきれいになってるとこもいい。


ドゥアン・ダーオのトムヤムクン』 Duang-Daao著

種明かしするとこの本を作っているのはBCCKSの開発にも参加している鍵っ子が作った本なんだそうで、BCCKSの機能を使いこなしてあるのは当然といえば当然なんだけど、それだけでもなくて、編集者やブックデザイナーでなくても「こういう本にしたい」「読者にこういう気持ちになってもらいたい」という意図が明確にあればそのような本がつくれるということだと思う。『犬ウォーターメロンシュガー』のぶつ切りにした生魚みたいな乱雑さも個人出版本の痛快さではあるけど、他方でこういう魅力的な本が無料プラットフォームで作れるんだヨということも主張していきたい。

作りのことばっか言ったけど内容もいいんだよなー。タチヨミ以降のとこではトムヤムクンのいろいろなレシピはもちろんのこと、トムヤムクンに捧げられたマンガや小説もあれば、日本で出版されているタイ料理の本10冊12レシピから、材料や分量の平均を求めた「日本の平均のトムヤムクン」(!)レシピ、タイのみそ汁とも呼ばれるトムヤムクンと、日本のみそ汁の境界を探るため、みそ汁にレモングラスやパクチーといったトムヤムクンのスパイスを混ぜていき味わい、それに「トミソシル」みたいな中間状態の料理名(!)をつけていくという「みそ汁とトムヤムクンの境界を探ろう」ワークショップのレポートまで。本の概要からはまったく予測もつかない素晴らしい内容。電子版400円でいろんな味が楽しめる本。

BCCKS / ブックス - 『ドゥアン・ダーオのトムヤムクン』Duang-Daao著


ロロイ『塔』を読んだ


』 ロロイ著


不思議な塔を上っていく、という体の超超短編集。電子書籍のショートショート集をスマホで読むとそうそうこういうのでいいんだよなーと思うけど(BCCKSだとヨシカワシオさんの『懐中小話』もいい)、このロロイさんの『塔』は「不思議な塔の各階の描写」というルールになってるのが本全体としてもフレッシュでとてもいい。ショートショート版『100かいだてのいえ』っていうか。ちょっとゲームブック感もあるし。

他の人もこのルールで本をつくったのも読みたい。


吉田棒一『犬ウォーターメロンシュガー』を読んだ


犬ウォーターメロンシュガー』 吉田 棒一著


かなり前からBCCKSでエッセイというかなんというか、ひとことでいうと「テキスト系個人サイトの文章」みたいなのを出版されている吉田棒ーさんの新作。「テキスト系個人サイトの文章」みたいなのが好きな人なら間違いなく楽しめるし、「テキスト系個人サイトの文章」みたいなのが好きな人はもう結構な年なんだからこういうものにちゃんと324円払ってほしい。

僕はBCCKSの電子版で読んだけどまったくもって頭から順番に読んだりするタイプの文章ではないので紙の本でトイレとかに置いて雑に読み始めて適当に閉じるくらいのほうがいい。紙本はこちらのその名もチンポシステムズ出版で1200円で買える。


NovelJam 2017のエントリー作を読んだ

NovelJam(ノベルジャム)|NPO法人日本独立作家同盟 on Strikingly


小説家と編集者、イラストレーターがチームを組み、2日間のスケジュール内で小説の企画、執筆、編集、発行および販売を目指すという世にも珍しいライブ書籍制作イベント「NovelJam(ノベルジャム)」というイベントが日本独立作家同盟(電子書籍時代のインディペンデントな作家活動を支援するNPO法人)主催で2月の頭に開催されていて、BCCKSは協賛企業としてイベントを支援していた(僕はスタッフとして参加できなかったんですが)。「執筆活動で音楽のジャムセッションのようにライブで生まれる体験を作れないか?」というような発想で生まれたと思われるNovelJamだけど、今の電子書籍環境ならば作家が会場に集まって作品を書いてコンテストして結果発表、というその場その時間の盛り上がりを「あれがもう今買って読めます! In Store NOW!」という形で読者側につなげられるはずで、今回はその試みのプラットフォームとしてBCCKSを使ってもらえてうれしい(BCCKSのストア配本サービスを使ってKindleをはじめとした各電子書籍ストアにも配信済み)。BCCKSの書店システムといういまいち活用されていない機能も、エントリー作や受賞作をイベント中に追加更新しながら結果発表書店を作るという形でフル活用できたみたい(もともとこういうコンテスト用途も見込んで開発された機能なのですよ…)。

NovelJam 2017 - Powered by BCCKS / ブックス

実際こういう趣旨でエントリーされた作品が並んでいるとじゃあまとめて読んでみようかという気持ちにもなってくるわけで(それが可能なエントリー数ということもあるけど)、今回は全作品を購入して読んでみた。二日間でゼロから書かれているので当然だけどどれもさっぱりとした短編で、普段なら読まないようなバラエティある小説をどんどん読めて楽しい。言いかたを変えると物足りない、割高ということにもなるけどそこは(少なくとも今回は)NovelJamという祭りに参加するチケット代と考えることもできるのかなと。電子書籍ではさくっと読めるシングル的な本がたくさん流通していくべきなのでは的な業界予測がされながらもいまいち定着していないわけだけど、こういうリアルイベントとのつながりというのは一つの解かもなと思った。

エントリー作のなかで一番好きだったのは『PAUSA』(澤俊之(著) 波野發作(編) 松野美穂(アートディレクター) 亀山鶴子(表紙デザイン・イラスト))かな。テーマである「破」にはあんまりつながってなかったのかなと思うけど読後感はとてもよかった。


PAUSA』 澤俊之(著) 波野發作(編) 松野美穂(アートディレクター) 亀山鶴子(表紙デザイン・イラスト)著

あともう一作挙げるなら『低体温症ガール』(ふくだりょうこ(著) 鈴木沓子(編) 亀山鶴子(表紙デザイン))が好きだった。短い作品ながら登場人物のキャラクターに触れたかんじがあって、このキャラクターたちの話がもっと読みたいといちばん思った。


低体温症ガール』 ふくだりょうこ(著) 鈴木沓子(編) 亀山鶴子(表紙デザイン)著


BCCKSでマメ本のすすめ

写真は波野發作『ストラタジェム;ニードレスリーフ Vol.0』のマメ本版

BCCKSの新しくなった紙本をみなさまにぜひ見ていただきたいということで、カラー・モノクロ問わず全てのタイプ(書籍、カードブック、マメ本)の自著紙本の価格を1/10まで15%割引するキャンペーンを始めました。

【15%オフ!】紙本キャンペーン実施中(自著全タイプ対象) :: BCCKS情報局

新しくなった紙本の仕様の詳細については公式のお知らせ弦人さんのfbに譲りますが、メインで使用するオンデマンド印刷機が変わり、それに合わせて使用する紙が変更になりました。一般にオンデマンド印刷機は印刷のキメやカラーでの色再現がオフセット印刷の印刷物と比べるとどうしても見劣りしてしまう(ちょっとカラーコピーぽいというか)ところがあるため、BCCKSの紙本ではあえてラフでやや黄味の強い紙を使うなどいろいろな工夫で「いかにもオンデマンド」と思われない仕上がりになるようチューンしていたんですが、新しい紙本ではシャープな印刷を生かす紙を選びなおしてあります。ぜひ仕上がりを見ていただきたいです。

でさて、今回の紙本キャンペーンでは初となるカラー書籍やカードブック(カードブックは裏に印刷がなく1枚づつはがせる仕様なので年賀状…は間に合わないけど寒中見舞いに使うちょっと凝ったポストカードを作るのもありです)も目玉なんですが、ここはぜひ「マメ本」をおすすめしたい。これも割引セールは初。

紙のブックスにかわいい「マメ本」登場! :: BCCKS情報局

「マメ本」はBCCKSの書籍タイプの各判型(文庫、新書、10インチ、A5変形)を高さ100mmに縮小した特殊な判型で、だいたい手のひらに収まるかんじのかわいいサイズになっています。豆本的な本を印刷製本するサービスは調べるといろいろあるようですが(アクシス出版の豆本セットとかBeanstagramとか)、価格的にも内容の自由度的にもBCCKSのような形で提供されているサービスは他にあんまりないと思います。ちなみに本のデータは通常の書籍タイプの本を編集して(128ページ以内の制限がありますが)マメ本として発注する形なので、ふつうのサイズの本としても注文できます(し、同じデータで印税を乗せて有料の紙本として販売開始したり、電子本として無料/有料で公開したり、国内主要電子書籍ストアに配信したりできます)。

マメ本はダース(12冊)単位の発注で、モノクロ48ページの本なら3,000円のところ、キャンペーン中は15%オフで2,550円。1冊当たりだと212.5円(税込みだと229.5円)。「12人に配る手のひらサイズのオリジナルコンテンツ」を作ってみる遊びとしても悪くない値段ではないでしょうか。キャンペーン期間はちょうど年末年始の休みでもあるので、この機会にどうぞ本づくりをお試しいただけると。


About This Game

「行為のシミュレーションとしてのビデオゲーム」の虚構的行為文についての解説を読んで連想したんだけど、ゲームの記事とかリリースに出てくるゲームの説明の奇妙さが好きで、前から集めていた。集めたのを本にしようと思って編集しかけたのが頓挫してたので、せっかくなので公開しとこう。



About This Game』 doppac著


Japanese Industry Meetupに参加した

W3Cの総会TPAC 2015のプレイベントとして、CSS WGメンバーとおもに日本語のレイアウトに関する話題をディスカッションするというイベント「Japanese Industry Meetup」にちょっとご縁がありBCCKSの人間として参加した。TPACは札幌で開催されるのでJIMも札幌に集まることになり、なぜかこの日だけ異常に寒く初雪の積もる札幌に向かった。

MeetupではCSSの仕様ライターとして有名なfantasaiさんからCSS WGの仕様決定プロセス(W3Cの標準的プロセスに加え、CSS SpapshotなどCSS WG独自のプロセスがあるとのこと)についての説明があり、その後は日本語のテキストレイアウトに関する仕様が今後CSSにどう組み込まれるべきかを日本語ベースで意見を出してWGメンバーに翻訳して質問したり伝えたりできるといいよねという時間が持たれた。W3Cの日本語組版に関する技術資料であるJLREQ(日本語組版処理の要件)でいうとどういう仕様がCSSで標準化する優先度が高いと日本は考えるのかという主語が大きい話題で僕が発言することになったんだけど、そこでは基本版面の行位置を守るための行グリッドの概念がCSSではどうなるのかという話題を出してけっきょくQ&Aの時間はこの話題で終始した。そもそも日本にかぎらず欧文でもページ間の行位置を揃えるVertical rhythmという考え方があり、これに対応したCSS Line Grid Moduleというドラフトがある(石井宏治さんによると7〜8年前?にMSが推進していた頃からあるとのこと)が、CSS WGのエディターのリソース的に手が回らないこと、またブラウザベンダーが実装を進めるような動きもないことから後回しになっている現状があるというのが解答で、欲しいなら(これはW3Cの標準化推進で一般的に言えることだと思うけど)WGに積極的に関わって誰かが仕様を書くように頑張るか、あるいはブラウザベンダーに働きかけてその機能を実装面から推進するよう頑張るか、いずれかの動きがないと優先度は変わらないだろうとのこと(ですよねー)。中国語の組版要件を進めているBobbyさんから中国の組版でも同様の原理はあり、中国ではさらに文字位置のグリッドも守る書式(日本でいうと原稿用紙みたいな)もCharacter Gridとして要件に含めているという話が出たりもして、行グリッド1つとってもあらゆる方面との整合性を保った仕様を書くのはひたすら大変だということはわかった。

あとどうやったらCSS WGに関われるかという話題もあったんだけど、まあ英語でがんばって発言するしかないということと、発言できないとしてもせめてドラフトを読んで議論して日本側の意見をまとめるくらいはしたほうがいいというこれもまあ至極もっともな話があった。たしかにCSSの最新仕様を知るみたいな勉強会じゃなくて、まだ実装されてないドラフトをみんなで読んで足りない仕様がないか議論するみたいな集まりがあるといいだろうなと思った。今回のJIMがそういう今後の動きにつながるのかな? せっかくなのでつなげたほうがいいですね。


BCCKSで目次自動ノンブル機能をリリースした

「紙本目次:自動ページ番号振り機能」をリリースしました! :: BCCKS情報局

いわゆる普通の紙本なら当然のように目次の項目には該当のページを探せるように対応するページ番号(ノンブル)が記載されている。これをBCCKSの紙本でやろうとすると、本の内容が確定したあとに印刷データを作って、そこで決まった各目次項目のページ数を目次に書き込む、というような手順を踏まないと実現できなかった。さすがにそれはあんまりなのでなんとかしたいと思っていて、他方そんなに大きな仕組み(本の発行に最初のフローで確定したページ番号などの数値が最終フローで埋め込まれるみたいなTeXみたいな仕組み?)を組み込む余裕もないということで、電子書籍のリンク目次を作成するための目次のページでリンクがはられた行について、印刷データ作成時にそのリンク先のページ番号を付加するという特別処理で目次ノンブルを実現できるようにした。ちょっと前からできていたんだけど最終的な詰めがなかなかできなくてようやくリリースできた。

一般機能としてリリースしたので紙本のための本で目次がつくってあるデータであれば、自動ページ番号機能をチェックして印刷データをまわせばノンブルが付加されるはず。BCCKSのエディタには目次記事に見出しからリンクを生成する機能もあるのであわせてご利用ください。


悪紫苑『ヴィーナス・アタッカーズ』を読んだ


ヴィーナス・アタッカーズ』 悪紫苑著

BCCKS / ブックス - 悪紫苑著『ヴィーナス・アタッカーズ』 http://bccks.jp/bcck/127334/info

12月から読んでた『ヴィーナス・アタッカーズ』をようやく読み終えた。作者の悪紫苑さんは初めて書いた小説だという前作『時空間エンタングル』からBCCKSで作品を公開してくださっていて、2年の執筆期間を経て発表された2作目がこの『ヴィーナス・アタッカーズ』。前作につづいてがっつりしたSF小説です。

人類により開発が進んだ金星——気温460度、90気圧、濃硫酸の雨が降る過酷な地表と、その上空50キロメートルに浮かぶ空中都市と飛行機たち——を舞台に、「大気圏内を飛びたい」という志願からまんまと金星に配属された飛行機乗りである主人公が、奇妙なめぐり合わせと不審なアクシデントを発端として大きな事件(?)に巻き込まれていく…という具合。前作の感想にも書いた通り、理学研究者である(んだと思う)著者の科学知識によるSF考証と、それをテコにして広げられた科学的大風呂敷の濃密さが持ち味ながら、ちゃんとエンターテイメントとしても最後まで(最後の最後まで…)おもしろく読めて満足した。

あとなんというからしいなあと思ったのはこの本の4章は「降下」というタイトルなんだけど、この章では確かに最初から最後まで「降下」しかしていないという。