ルチアーノ・フロリディ『第四の革命 情報圏(インフォスフィア)が世界をつくりかえる』を読んだ

第四の革命


弊社代表石橋の推し哲学者ルチアーノ・フロリディの単著としては初の邦訳(でいいのかな?)。フロリディさんは「有形無形問わずあらゆるものは情報であり、情報の『よさ』を中心とする情報倫理を構築すべき」という非常にラジカルな世界観を提唱する情報哲学者なんだそうだけど(参考:情報/ITアーキテクトのための「使える!フロリディ情報哲学」)『第四の革命』はその情報哲学の入門編ともいえる内容で、ドライブ感ある文体や独特の(センスオブワンダーを感じる)造語が読みやすく訳されていてたいへん楽しめた。

この本のいう「第四の革命」とは、コペルニクス、ダーウィン、フロイトに次ぐ第四の脱人間中心パラダイム(の転換期)として、昨今のITC技術による情報爆発とその自律エージェント化を位置づけるもの。人間環境のデフォルトと化した人工物を「新しい自然」と見なしたり、IoTやスマートエージェント技術の描く未来像に人間中心主義の終わりを見いだすような発想はとりわけ新しいというわけでもないかなと思いながら読んでいたんだけど、人間を情報エージェントととらえたとき、これまで「人間性」を基礎づけてきたシステム(たとえばプライバシー、たとえば政治)がどのような物理的制約のもとで成り立ってきたのか、そしてすでにわれわれが手にしている高度に発展し民主化されたICTが、そうした「人間性」をどのように作り替えているのか、つまり、すでに情報エージェントであるわれわれが、いま「人間性」とは実際には何だと思っているのかをここまで詳細に網羅的に分析していると説得力が違うなと思う。そしてやっぱり数々繰り出されるキャッチーな造語が「第四の革命」感あって最高。inforg(情報有機体)! e-mortal(e-不死)! 情報摩擦! 政治的アポトーシス!

「世界の見方を変える」という意味ではまさしく哲学書なんだろうけど、いわゆる「哲学書」的な語彙は少なく前提知識も不用だし、むしろIT技術書のようなプラクティカルなセンスにあふれている(「社会契約説では人は法的にオプトアウト」みたいなパンチラインがぼんぼん出てくる)のでまあ分厚いけど恐れずにノリでどんどん読んで情報圏インフォスフィアに取り込んで作り替えていくといいと思う。

石橋さんとオーバーキャスト大林さんのフロリディ対談は、あんまり本書の内容に触れてなくて残念だったな。この本の内容にこだわった読書会的なやつ希望。