青山拓央『幸福はなぜ哲学の問題になるのか』を読んだ

幸福はなぜ哲学の問題になるのか - 太田出版


『タイムトラベルの哲学』の青山拓央さんによる、幸福の哲学をまとめた本。時間論が専門の青山さんがなぜ「幸福」なんだろうと思いつつ読み始めたんだけど、そうではなかった。われわれが素朴に感じている時間の流れとその中にある「今」、そして「今のようでなかったかもしれない世界(可能世界)」というものと「幸福」がとても密接な関係にあり、われわれの生の実感につながる「幸福/不幸」の見積もりが、「この世界が今のこのようでなかったら」という現実としては合理性をもたない想定、つまり錯覚によってなされているというのが『幸福はなぜ哲学の問題になるのか』という書名につながる本書の世界観で、まさに青山さんの問題意識ど真ん中なんだろうな。近く刊行されるという『時間と自由意志』を補うように生まれた本という側面もあるそう。

でも一方ではこの本はわれわれが主観的に感じる幸福のありかたについての様々な論点をやさしい語り口で腑分けしていく幸福に関するエッセイのようにも読める本になっていて、途中はさまれる子供に向けた幸福を考えるための文章(『付録:小さなこどもたちに』)も実によくて、装丁も含めて「幸福の匂い(朝食のパンの話が出てくるからかなんとなく軽いパンっぽい感じ?)」のするような滋味深い本だった。