川端裕人『動物園にできること──「種の方舟」のゆくえ(第3版)』を読んだ


動物園にできること──「種の方舟」のゆくえ(第3版)』 川端裕人著


いまBCCKSにて紙本好評販売中の『動物園にできること』、動物園関係者のなかでは熱狂的に支持され読み継がれているという有名な本なのだそう(1999年発売の単行本、2006年の文庫版はいずれも絶版で、amazonではプレミア価格の古本が流通するほど)。いい機会なのでと紙本版を読んでみたんだけど、たしかにこれはとてもいい本だった。

僕はこれまで、もちろん子供の頃に何度も連れて行ってもらったことはあったんだけど、動物園やそこでの体験に強い思い入れを持つことがないまま生きていていて、他方子供ができてそこそこ大きくなってくると、今度は親の立場で子供を動物園に連れて行くような機会が増えてきた。そういう僕みたいなタイプの人間がこの『動物園にできること』を読むと、動物園でぼーっと「ああ、確かに動物がいるな」と思う以外で、動物園のどういう部分に興味を持てばいいのかというヒントが得られるのではないかと思う。しかもそれは(上記の動物園関係者のバイブル的な紹介からも予想されるような)動物園にいる動物の魅力に気づかせるようなヒントではなく、むしろ「アーキテクチャとしての動物園」を考えるためのサイエンスやテクノロジーについてのヒントで。そこがこの本の希有な部分なのかなと思った(これは類書を読んでいないので想像だけど)。

とくに興味深かったのは、「ランドスケープ・イマージョン」と呼ばれる情景展示の方法論を中心とした「デザインされた自然」としての動物園はどうあるべきかという議論。「ランドスケープ・イマージョン」という方法論そのものをはじめて知ったし、その影響をうけながらも日本では没入型の展示は受け入れられず代わりに定着したのがいわば動物の「キャラ」を魅力的に伝えることを優先する「行動展示」だというのは、コンピュータゲームデザインの日米での美意識の違いで言われるのとほとんど変わらない構図だなーと思った。この知識だけでも持っていろいろな動物園を見比べると楽しめそう(本式のイマージョン型展示を実際に見てみたい。ズーラシアはいまいちなようだし国内だとどこで見れるのだろう…)。