馬定延『日本メディアアート史』を読んだ

日本メディアアート史
馬定延(マ・ジョンヨン)
アルテスパブリッシング
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1970年以降の日本のメディアアートが、というより、「日本のメディアアート環境」がいかに成り立ってきたのか。作家論や作品論ではなく、歴史そのものでもなく、「なぜ彼らはその時その作品が作れたのか」を資料や証言からたどりなおした本。もとが博士論文なためか硬質な文体だけど(先日のトークショーで馬さん本人は「そういう本ばかりで日本語を学んだため」と言っていだけど)すごくリーダビリティが高くてあっという間に読めた。

かつてないスピードでテクノロジーが発展しその期待が極限まで高まっていた時代、その期待を動員せんとする国や企業が、未来ビジョンとしての「テクノロジーの過激な使用」を求めてアーティストに特権(技術や舞台)を用意した。ある時点までの日本のメディアアートがその「特権性」のことだったことを本書は繰り返し確認している。そしてその時代の寵児としての側面をふくめた多くの「はかなさ」ゆえに、時代を経たメディアアート作品を正当に評価することは極めて難しい。しかしそれでもメディアアートとその作家が好きだという筆者がとり得たもっとも誠実な態度が本書の歴史記述なんだろうと理解した。八谷和彦さんが「鏡はもっとも理想的なメディアアートのかたち」ということを言っていたけど、この本もある種の人々にとっては自分の姿を映す鏡のように見えるのではないかと思った。