平松るい『かど松 2015 特集 ひつじ』を読んだ

平松るいさんというのは女子美の学生さんで、modern fartでの細馬宏通さんの連載「うたのしくみ」の巻頭イラストや単行本の表紙イラスト、二階堂和美「とつとつアイラヴユー」MV(アニメーションVer.)などを手がけてらっしゃるイラストレーターさん。とつとつアイラヴユーアニメーションVer.は気合入った仕事で未見でしたらぜひどうぞ(これアニメじゃないVer.も観るとすばらしさがよくわかるんだけど、いまだにじみ 【デラックス・エディション】買わないと観れないっぽい)。

で、その平松さんがこの新春にお年賀がわりの自主制作雑誌「かど松」というのを作ったので希望者に配布しますよとtwitterでツイートされていたので所望したところ、2月になっても届かないので変だな―と思いつつ、これはきっと平松さん忘れているだろうから今年の年末あたりに届いてなかったよと問い詰めてやろうとか意地の悪いことを考えていたらなんのことはない家族が受け取ったものが荷物の山に紛れ気づいていなかっただけだった。

それでようやく「かど松」を読んだのだけど、これがすごいよいもので大変ありがたい気分になった。もう2月も中旬だけど正月のあらたまった気分にもどされたかんじ。なんでかとても気持ちのよい雑誌になってました。

そして収録原稿のなかでも白眉とされる伊藤ガビン渾身のなんの役にも立たないテキスト「おモチ、お正月」が素晴らしい。媒体上たぶん読んでるひとがそうとう少なそうなので、ここに少しクリップしておきます。

かど松を定期購読なさっているみなさん、はじめまして。神奈川県で小さな食堂を営んでいる伊藤と申します。ウソですが。
むかしは東京で編集の仕事などをちょこまかしていたのですが、いまは出身地である神奈川県の海沿いに根をおろし、ちいさなちいさな食堂をはじめました。うそですけど。
うちの食堂は、料理をする私がどこか名のある料理店で修行したわけでもないですし、特別な仕掛けも、眼を見張るような眺望も、なんにもないんですよね。でも、魚を見る目だけは、なぜか子供の頃からありましてね。魚を見ると、それがすごくおいしい一匹かどうか、なぜだかわかる。ド素人の僕だけど、なぜかそこだけは自信がある。だから刺身定食を、うちの主力商品にしているんですよね。って自分の魚を見る目に自信持ちすぎですかな。うそなんですけども。
えーと。うそばっかりかいててもしょうがない。せっかく新しい年になったんだから、ほんとのことを、ほんとのことだけを、正直に書いていきたい。ほんというと、僕の店で出しているなかで一番おいしいのは、お刺身定食じゃあないんですよ。
宮城県に移り住んだ友人が大事に育てている仙台牛を使った牛たん定食が最高なんです。今年は未年っていうじゃないですか。それはそれとして牛たん定食だけは自身を持ってオススメできます。これだけはマジ。うそですけど。
いや、マジメな話、神奈川県の、湘南と呼ばれるようなこの地域でね、仙台牛の牛たんをオススメって、ちょっとブランディング的にどうなんだろう?って思うんですよ。望まれてないでしょ?
例えばあなたが明日京都旅行に行ったとしましょう。そこで友達にね、なんかおいしいもの連れてってよ、って言った時に連れて行かれた先が九州ラーメンの店。これどうなんです?釈然としするのか、しないのか。どっちなんですか。どちらでもない。はい正解です。何でも二択で答えられると思ったら大間違い赤間違い黃間違いですよ。人生はそんなにシンプルではない。スティーブ・ジョブズの言葉です。
死んだ人の言葉はどうでもいいか。そもそもそんなことジョブズは言ってないし。
牛たんの話ですよ。

《以下延々とつづく》

伊藤ガビンかど松 2015「おモチ、お正月」より